【玉ノ井 視点】膝の不安うまさでカバー 若隆景の力強さ

＜大相撲名古屋場所・第5日＞美ノ海を寄り切りに破る若隆景（撮影・井垣　忠夫）

　◇大相撲名古屋場所5日目（2024年7月18日　ドルフィンズアリーナ）

　返り入幕の若隆景が力強い相撲で名古屋のファンを沸かせている。昨年の春場所で右膝前十字じん帯断裂の大ケガを負い、一時は幕下まで番付を落としたが、状態はだいぶ戻ってきているようだ。

　美ノ海戦も下から攻めて素早く右を差すと、そのまま前に出て勝負を決めた。相手に付け入る隙を与えない完勝だった。1メートル82、135キロの体は幕内では小柄な部類に入る。だが、どんな相手に対しても真っ向勝負で前に出る相撲を貫く。

　膝のケガの完治は難しいだろうが、その不安をうまさでカバー。正面からのおっつけが巧みで、右を差してからの動きも速い。懐に入るのもうまい。番付上位の力士にとっては、あまり当たりたくないタイプだろう。幕内優勝経験者だけに、下位の中では強さが際立つ。このまま好調をキープして上位を脅かす存在になってほしい。（元大関・栃東）