横浜、8度伝令のち執念4強 「守備妨害」猛アピール村田監督「去年のことがよみがえった」

＜横浜・桐光学園＞6回1死一、三塁から二ゴロを巡り、判定を確認する横浜・奥村（左）＝撮影・柳内　遼平

　◇第106回全国高校野球選手権神奈川大会準々決勝　横浜9－2桐光学園（2024年7月20日　サーティーフォー保土ヶ谷）

　第106回全国高校野球選手権（8月7日開幕、甲子園）の出場校を決める地方大会は20日、39大会で191試合（継続試合を含む）が行われ、神奈川大会の準々決勝では横浜が桐光学園を9―2で下し準決勝に駒を進めた。6回1死一、三塁で二塁手と一塁走者が交錯して併殺を取れずに失点した場面で、村田浩明監督（38）は8度も審判団に伝令を出して守備妨害をアピール。認められなかったが、直後の攻撃で一挙6点を奪い試合を決めた。

　もう選手がやるせない涙を流すのは見たくない。だから村田監督は一歩も引かなかった。3―1で迎えた6回の守備で1死一、三塁からゴロを捕球した二塁手が一塁走者と衝突。判定はタッチアウトのみで三塁走者が生還した。衝突がなければ併殺を狙えるタイミングだっただけに指揮官は守備妨害をアピール。審判団に8度も伝令で確認した。

　村田監督は「去年のことがよみがえった」と言った。昨夏は横浜スタジアムで行われた神奈川大会決勝で慶応に惜敗。2点リードで甲子園出場が目前だった9回無死一塁の守備で4―6―3の併殺崩れで1死一塁と思われたが、ベースを踏んでいないとされ二塁判定はセーフだった。直後に指揮官は判定への確認を行ったが、投手を含め守備のリズムを崩さないためすぐに引き下がった。だが選手には動揺があったのか、まさかの逆転負け。選手は悔しさ、もどかしさにまみれた涙を流した。ほんのわずかの差で甲子園出場を譲った慶応は107年ぶりに全国制覇。一つのプレーで明暗が分かれた。

　確認を重ねて納得した村田監督は、暑さを避けるためにベンチに下がっていたナインに熱く声をかけた。「勝つしかない！」。リードは1点。直後に中堅への鋭いライナーが飛んだが、2年生主将の阿部葉太が執念のダイビングキャッチで3アウト目をつかみ取った。

　昨夏の慶応戦も中堅を守っていた阿部は「頭の中で（昨夏の決勝が）よぎって逆に燃えた」と振り返る。直後の攻撃で阿部が2点適時打を放つなど、指揮官の思いも胸に打線は5安打で一挙6得点。強敵を圧倒し、7回コールド勝利を決めた。

　23日の準決勝の相手は武相。勝てば、決勝の舞台は横浜スタジアムだ。「選手は僕が思っている以上に成長している」と村田監督。涙にくれた過去との決別まで、あと2勝だ。（柳内　遼平）

　▽横浜の昨夏の神奈川大会決勝　3大会連続の甲子園出場を狙ったが、慶応に逆転負け。2点リードの9回無死一塁の守備で4―6―3の併殺崩れで1死一塁と思われたが、二塁判定はセーフ。遊撃手の緒方漣主将が触塁できず空過したという判定で無死一、二塁となり、その後、慶応の渡辺千之亮に逆転3ランを被弾。緒方主将、エース左腕・杉山遥希らの涙は止まらなかった。