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参加選手が初めてパリ五輪で男女同数に 重量挙げメダリスト・三宅宏実さんが思う「スポーツと女性の未来」

スポニチアネックス / 2024年7月24日 5時2分

東京五輪・重量挙げ女子49キロ級で、スナッチ74キロを成功させる三宅宏実(撮影・北條貴史)

 ◇レジェンドの視点~重量挙げ・三宅宏実さん

 パリ五輪は参加アスリートが男女同数となった初めての大会として歴史を刻む。近年は女性が出場できる競技、種目が飛躍的に増え、男女混合種目も目立つ。日本の誇る超人たちがスポニチの紙上に参戦するコラム「レジェンドの視点」。第1回は重量挙げで12年ロンドン、16年リオデジャネイロと連続でメダルを獲得するなど実績を挙げ、道を切り開いてきた三宅宏実さん(38)がスポーツと女性のこれからについて、思いを巡らせた。 (取材・構成 首藤 昌史)

 男女の参加アスリートが同数になったと聞いて、「どうやって同数にしたんだろ?」というのが素直な感想でした。実際には重量挙げは2000年シドニー、レスリングが04年アテネ、ボクシングは12年ロンドンから五輪で女子も実施種目入りしています。多くの女性アスリートの声が歴史を変えてきたことに、改めて敬意を表したいと思います。

 私は父(メキシコ五輪銅メダルの義行氏)が指導者だったので、女性アスリートとしての特別な苦労のようなものはあまり感じたことはないんです。ただし競技者が競技を続ける上で、周囲の協力は男女関係なく不可欠なのは理解しています。今年、長男を出産したのですが、もし競技者としてのキャリアが続いていたら、本当に大変だったと感じます。パリでは選手村に史上初めて託児所ができたように、環境の整備も男女同数の実現には欠かせないものだったと思います。

 でも、その同数はあくまで新たなスタートに過ぎないと、私は思います。まず一つに、ここから女性の種目、女性アスリートの魅力をどう発信していくか。見る人にも五輪で実施する価値を感じてもらうべきではないでしょうか。「女性だから」と与えられた枠に甘えたら、発展はないと思います。

 例えばテニスは威力抜群のサービスで決まる男子の面白さと、粘り強いラリーの応酬となる女子の面白さは違うと聞きます。自分が携わってきた重量挙げで考えると、男子のスピードやパワーにはかなわないけど、女子には女子の柔らかさを生かしたフォームの工夫など、アピールしたい部分はあります。

 もう一つ、アスリートの男女同数がスタートに過ぎないと思う理由に、指導者や選手団役員数の男女比の違いがあります。国際連盟(IF)や国内統括団体(NF)は女性理事の比率を50%に高める努力をしていますが、これもいわば「枠」の話。本当に女性の力を必要とし、生かしているか。現在IF(国際ウエートリフティング連盟)の理事を務める私も時折、疑問に感じることがあります。

 特筆すべきは指導者の女性比率で、世界各国の代表団で10%程度と言われています。私は所属先「いちご」で選手の指導にも当たっていますが、指導者には自らの経験だけでなく、しっかりとした理論が必要だと感じています。理論を身につけるには勉強が大切で、その勉強の時間を捻出する大変さは、想像以上です。

 女性は人生の中で出産や育児を経験するケースもあり、キャリアを中断せざるを得ないこともあります。その中で競技にずっと携わり続けるには、現役時代以上に周囲の協力が必要となることは間違いありません。また、一度はその世界を離れた人材が、指導者などの道に戻ってくることができるスキームづくりも、これからは重要になるでしょう。時代はここから、まだ変わっていくと思います。 (重量挙げ女子五輪2大会連続メダリスト)

 ◇三宅 宏実(みやけ・ひろみ)1985年(昭60)11月18日生まれ、埼玉県出身の38歳。父・義行氏はメキシコ五輪銅メダリストで伯父の義信氏は五輪連覇という重量挙げ一家に生まれ、中学3年時の00年シドニー五輪で初実施された女子種目を見て競技開始。48キロ級で04年アテネから五輪5大会連続出場し、12年ロンドン銀、16年リオデジャネイロ銅。昨年、同競技リオ五輪男子62キロ級代表の中山陽介氏と結婚。現在は日本協会常務理事、国際連盟理事、日本オリンピック委員会のアスリート委員なども務める。いちごウエイトリフティング部コーチ。

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