【内田雅也の追球】例年より早く訪れた「結果オーライ」の季節 巨人、広島追走へ、とにかく勝てばいい
スポニチアネックス / 2024年7月29日 8時2分
◇セ・リーグ 阪神4ー3中日(2024年7月28日 甲子園)
午後10時を回り「ジージー」とバックネットにいたアブラゼミが鳴きだした。風もやんでいた。蒸し暑さのつのる延長11回裏だった。
1死二塁。森下翔太の一打が左翼線に転がり、近本光司がサヨナラの本塁へ滑り込んだ。大歓声のなか、もうセミの声は聞こえなかった。
阪神監督・岡田彰布は例年、シーズン後半の勝負どころを迎えると「どんな形でも勝てばええんや」と内容は問わなくなる。それまでは勝っても負けても反省点を指摘し時に激しく非難する。むろん、チームの成長を願ってのことである。
ある時期が来ると「勝てばええ」に変わるのだ。前回監督当時(2004―08年)は「勝負は9月」が口癖だった。8月の長期ロードが明けると「勝てばええ」になる。
ところが昨年、阪神監督に復帰して勝負時期が早まっていることに気づいた。開幕が早まり、試合消化が昔より早いのだ。今の勝負時期は8月中旬と言えるだろう。
今季はさらに早まったとみている。すでに今、勝負の時期に来ている。何しろ混戦のセ・リーグで上位にいる巨人、広島を追う立場なのだ。もう「勝てばええ」である。
3―1と2点リードの9回表に投入した岩崎優は思わぬ不調だった。制球が定まらず、切れも欠いていた。4安打1四球で2点を失って同点とされた。1イニングで実に43球も投げた。クローザーとして、心を痛めていることだろう。
岩崎は球宴明け後半戦を迎えるにあたり「救援陣で負けない」というテーマを掲げていた。26日付本紙1面で明かしていた。「もう状態や調子がどうと言ってられない時期がくる」と勝負時期の到来を感じていた。
試合内容はお世辞にもほめられたものではなかった。8回まで拙攻の連続だった。12安打2四球敵失1で3点。併殺打2本に走塁死2度、8残塁。つまり12人の走者を無駄にしていた。
それでも――勝てばいいのである。勝利監督インタビューで内容について問われると「内容?」と言葉に詰まった。記者団の囲み会見が終わり、「勝てばええ、と書きます」と伝えると「そらそうよ」。そして「内容じゃないよう」と口にし、駄じゃれになっていることに気づいて笑った。
例年よりも早く「結果オーライ」の季節が訪れていた。 =敬称略=
(編集委員)
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