柔道・高市未来 涙の2回戦敗退 大ケガ乗り越え…3度目五輪もメダル届かず「難しいな…何度挑んでも…」
スポニチアネックス / 2024年7月30日 18時58分
◇パリ五輪第5日 柔道(2024年7月30日 シャンドマルス・アリーナ)
女子63キロ級の高市未来(30、コマツ)が30日、2回戦でカタリナ・クリスト(22=クロアチア)に延長の末に技ありを奪われ敗戦。初メダル、そして金メダル獲得を目標に掲げて臨んだ3度目の五輪でもメダルを手にすることはできなかった。
最後まで優勢を保っていたのは高市だった。隙あらば寝技を狙い相手のスタミナを削った。延長に入ってもしばらくは相手が指導2、自身は指導1と有利に試合を進めていた。しかし、開始7分すぎ、一瞬の隙を突かれ倒れ込む。審判のコールは技あり。畳に座り込み呆然とした表情を見せた高市は、畳を降りた後に悔し涙を流し「本当に、ずっと夢見た舞台で…そこに立って、立ちたいと思って前を見て進んで来たんですけど…難しいな…と思いました」と3度目の五輪に立った思いを吐露。そして自身にかける言葉を聞かれ「お前、何やってんだよっていうのがまず一つ…」。堪えていた涙があふれだし「ここまでいろいろ前に進んでやって来たんで…もう一つ頑張ってほしかったなっていう気持ちが強いです」と声を絞り出した。最後にファンや応援してくれた人たちに向けて「本当にたくさんおご声援をありがとうございました。本当に、何度挑んでも中々越えられない壁なんですけど、も、本当に挑めたことが私の人生にとって、とても素晴らしいことだったなと思います」と涙を拭い前を向いて語った。
大会に向けて「パリオリンピックに向けて、順調に準備ができています。最高のパフォーマンスで自身初の金メダルを目指します。柔道の素晴らしさ、楽しさ、夢に挑戦することの素晴らしさを皆さんにお伝えできてるように頑張ります!」と意気込んで迎えた3度目の五輪。初戦は積極的に技を仕掛け続け、大内刈りで技ありを奪った後に寝技で合わせ技一本。順調なスタートを切った高市だったが、2回戦で若き難敵に苦杯。悔しい2回戦敗退となった。
2度目の挑戦もまさかの3回戦敗退を喫し、文字通り枯れるまで涙した東京五輪から3年。女子7階級で16年リオデジャネイロ大会は自身を含む2人、そして東京では唯一メダルを逃す屈辱を味わい、引退の2文字が脳裏をよぎったが、再び畳の上に立つことを決意。本格的に稽古を再開した直後の22年2月、左膝前十字靱帯(じんたい)断裂の大ケガを負った。柔道の神様は、あまりに冷たかった。
そんな苦境で支えてくれたのが、同年11月に結婚した夫の賢悟さん(現台湾代表コーチ)だ。心配性でネガティブ思考の高市に対し、賢悟さんはポジティブ思考で、何より自身は一度も踏めなかった五輪に2度も出場している妻に最大級の敬意を払った。気持ちが塞ぎがちな時、何気なく「あなたのやっていることは、凄いことだよ」と言葉を掛けられ、つらいリハビリも乗り越えた。同年12月のグランドスラム東京大会に、初めて「高市未来」として出場。結果も優勝。夫婦そろって「思い出の試合」と言った。
22年には同じく既婚選手の堀川(旧姓津金)恵が世界選手権を制覇。大きなビハインドを背負ってパリ五輪代表争いに加わったが、着実に結果を残して差を詰め、昨年12月のグランドスラム東京大会決勝で直接対決に勝って3大会連続の代表に内定。日本柔道界ではまだまだ少ない既婚女性同士による代表争いを制し、新しい時代の到来を示した。
田代で届かなかった五輪のメダル。「高市で金」を目指して挑んだパリ五輪もメダルに届かなかった。しかし、高市が見せ続けてきた努力と背中は、色あせることはない。
◇高市未来(たかいち・みく)1994年(平6)4月7日生まれ、東京都出身の30歳。淑徳高を経て13年4月からコマツ所属。旧姓・田代。小2で警察官の父の影響を受けて高雄警察署で柔道を開始。その後、相武館吉田道場にも通い、小6で全国小学生学年別大会で優勝。高1だった10年の世界ジュニア選手権で優勝。初出場だった14年世界選手権は3位、翌15年も3位。16年リオデジャネイロ、21年東京五輪ではいずれもメダルに届かなかった。22年11月に男子66キロ級で強化選手だった高市賢悟さん(現台湾コーチ)と結婚。
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