ウルフ・アロン メダルなしでパリ終戦…敗者復活戦でも敗れ涙「心残りはある」男子の大会連続メダル止まる
スポニチアネックス / 2024年8月1日 23時25分
◇パリ五輪第7日 柔道(2024年8月1日 シャンドマルス・アリーナ)
男子100キロ級のウルフ・アロン(28、パーク24)が1日、敗者復活戦でニコロズ・シェラザジシビリ(28=スペイン)に敗戦。メダルなしで終戦となった。ウルフが負けたことで、初日の永山から獲り続けてきた男子チームのメダル獲得が5日間でストップ。連覇を目指してたどり着いたパリの地で、結果を出すことはできなかった。
連覇の夢は途絶えた。そして男子チームが初日から守ってきた連続メダル獲得も5日でストップした。4分間はウルフのペースだった。しかし、延長戦に入ると相手が積極的に技を先行。“ウルフタイム”での勝利を期待したが、6分27秒、内股で力尽きた。
無念の準々決勝から気持ちを入れ替えたウルフだったが、敗者復活戦でまさかの敗戦。メダルを持ち帰ることはできなかった。
畳を下り「戦略的な部分でも技術的な部分でもまだまだやれる余地があった。最後の最後投げきって終わりたかったが、相手も対策していた」と冷静に試合を振り返っていたウルフだったが、3年間を振り返り「一度はやめようとした…柔道ではあったが、結果を残すことはできなかったが、この大舞台に戻ってくることができてよかった。たくさんの人が応援してくれているのも分かっていた。柔道人生の集大成にしたい大会だったので心残りはある」と声を振り絞り、涙を拭った。
ウルフは終わった――。そんな陰口も本人の耳に入ってくる危機的状況から、パリの畳へとはい上がった。東京五輪後はメディア出演で多忙な日々を過ごし、2、3カ月先まで予定がいっぱいという芸能人並みの人気ぶりを誇った。食欲のリミッターも外し、好きなものを好きなだけ食べているうちに、体重は125キロを超えた。それでも頭を切り替えれば、再び闘いのステージに戻ってこれると信じてやまなかった。
ふたを開けてみれば、九死に一生を遂げるパリロードだった。当初の復帰戦はケガで流れ、仕切り直しだった国際大会はコロナの陽性判定で出発予定の空港で足止め。22年10月の講道館杯で復帰したが、結果は3位で従来は売りにしてきた「ウルフタイム」と呼ばれる無尽蔵のスタミナを武器に後半勝負に出る闘いは見る影もなかった。
昨年12月のグランドスラム(GS)東京大会で7位に終わると、ショックのあまり思わず涙した。それでも首の皮一枚つながると、今年2月のGSパリ大会で復活優勝。「何で自分が柔道をやっているのか分からない時期もあった。自信も失い、モチベーションもなかった」と振り返るが、自らの意志で決めた歩みに後悔はない。
メディア出演や自身のユーチューブチャンネルを頻繁に更新してきたのは、普段柔道を目にしない人たちに、少しでも関心を持ってもらうため。だからこそ、「勝ったからやる、負けたからやらないというものではない」と競技成績にとらわれず、信念を貫いた。強化委員会で「テレビタレント」と揶揄されたこともあるが、この3年間の普及活動への貢献度は、どの金メダリストよりも大きかった。
だからこそ、もう一度、金メダルをつかみたかった。連覇を達成したかった。苦難の3年間を歩きたどり着いたパリでの五輪第2章は、悔しい結末となった。
◇ウルフ・アロン 1996年(平8)2月25日生まれ、東京都出身の28歳。千葉・東海大浦安高、東海大を経て18年4月から了徳寺大。昨年4月からパーク24に所属。父が米国出身、母が日本人のハーフで、ミドルネームはフィリップ。6歳の時に講道館の春日クラブで開始。高校時代は2年の時に1学年上のベイカー茉秋とともに団体戦で3冠を達成。初出場だった17年世界選手権を制覇。19年には体重無差別で争う全日本選手権を制覇。21年東京五輪で金メダルを獲得し、史上8人目の3冠を達成。
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