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【内田雅也の追球】「惜福」のための1敗に下を向く必要はない 負けた翌日こそが肝心

スポニチアネックス / 2024年8月4日 8時2分

6回、オースティン(奥)に2本目の本塁打となる同点ソロを打たれ、肩を落とす大竹

 ◇セ・リーグ 阪神4ー10DeNA(2024年8月3日 横浜)

 連勝もいつかは止まる。こう書いては元も子もないが、阪神はそろそろ負けるころだとみていた。連勝は「8」でストップ。ひと休みである。前夜も書いたが「これでいいのだ」である。

 敗戦後は決して口にしないが、監督・岡田彰布には「勝負事は勝ち過ぎてはあかん」という持論がある。2010年発行の著書『動くが負け』(幻冬舎新書)に記していた。<試合に「流れ」があるように、シーズン全体にも流れがある><10連勝すると、その後に10連敗する気がするのだ>。反動がくるわけだ。

 「惜福(せきふく)」の考え方である。与えられた福を取り尽くし、使い尽くしてしまわず、天に預けておく。明治の文豪、幸田露伴が『努力論』で主張している。

 勝負師だったプロ棋士で名人にもなった米長邦雄が<幸福に遭う人の多くは惜福の工夫のある人>と著書『運を育てる』(祥伝社文庫)に書いている。

 岡田は現役中の1982(昭和57)年6~7月に11連勝した後、8連敗を経験している。監督だった2007年8~9月には藤川球児の10連投で10連勝したが、後に8連敗と反動があった。

 今ではそんな酷使はしない。救援投手は3連投すら避けようとしている。これも先を見越した惜福の工夫だろう。

 試合は4―4同点の7回以降に6失点しての大敗だった。岡田は6回裏、タイラー・オースティンに浴びた2本目の同点弾について「あれがなければ、出す投手も全然違ってきたのに」と嘆いた。だが、勝ちパターンの救援陣、石井大智や桐敷拓馬らを休ませることができたわけだ。消耗も反動もないだろう。

 それにこの夜の打線はどうも快打が野手の正面を突く不運な当たりが多かった。順に記せば、1回表の大山悠輔左飛、3回表の中野拓夢中飛、森下翔太三直、佐藤輝明右飛、5回表の森下右飛、8回表の大山左飛……。フライはいずれもライナー性の打球だった。相手にはポテン打など、幸運な安打が見られた。

 ただし、運を使い果たしてしまわないという惜福の考え方からすれば、不運もまた、来たるべき幸運のためとみたい。

 先の米長の著書の副題は『肝心なのは負けたあと』。再度、幸運にめぐり会うため、この1敗を大切にしたい。再スタートである。 =敬称略=

 (編集委員)

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