AS 8万5000円払って抗議 TRが6位→3位に 東京五輪後採用の新ルールとは?
スポニチアネックス / 2024年8月7日 2時31分
◇パリ五輪第11日 競泳(2024年8月5日 アクアティクスセンター)
5日のチーム・テクニカルルーティン(TR)で、日本(比嘉、木島、小林、佐藤、島田、和田、安永、吉田)は284・9017点で3位につけた。演技直後は技が事前申告通りと認定されず「ベースマーク(BM、最低評価)」となり、大減点を受けて253・6617点の6位と発表されたが、日本の抗議が認められて得点が大幅増。銅を獲得した16年リオ五輪以来2大会ぶりの表彰台へ好発進した。6日のフリールーティン(FR)、7日のアクロバティックルーティン(AR)との合計点で争う。
暗い顔をした選手たちが取材エリアを通過した後、中島監督が興奮した様子で報道陣の前に姿を現した。「大幅減点がなくなりました!プロテスト(抗議)でOKをもらいました。抗議したのは初めて。神頼みでした」。微妙な判定に対する抗議が認められ、得点が修正されて31・24点の加算。6位から3位にジャンプアップした。
東京五輪後に変更された現行ルールでは、技が事前申告通りと判定されなかった場合「ベースマーク(BM)」となり、大減点を受ける。運命を変えたのは演技終盤の連続した脚技。当初は脚の角度に乱れがあるとジャッジされた。規定ではBMと判定された場合は競技終了後30分以内に500スイスフラン(約8万5000円)を払えば抗議が可能で、判定が覆れば返金される。中島監督は即座にプロテスト用紙を提出。VTRで再検証された結果、BMが取り消された。
日本は10チーム中8番手で登場し「雷」をテーマに演技。難易率を上げて高得点を狙うか、大減点を避ける安全策かの駆け引きもあり、最終的に少し難易度を下げる構成に決めたのは本番前日だった。抗議が認められる前はトップの中国に60点近い大差をつけられ、3位イタリアとも24・1687差。メダルに黄信号がともっていた。
選手が取材エリアに現れたのは抗議前。吉田主将は「練習からうまくできていなかった。練習でうまくできていないものは本番でもうまくできない」と厳しい表情を浮かべ「まだ2日続く。残りはパーフェクトな演技をしたい」と必死に前を向いていたが、一転して表彰台への視界が開けた。残るはFRとAR。4位につけた米国もBMが取り消されており、各国の抗議が終わるまで心が休まらないタフな戦い。どん底からカムバックした勢いを追い風にする。(木本 新也)
《フィギュア参考に22年から新ルール》
▽アーティスティックスイミングの新ルール 「序列がある」「分かりにくい」などの批判があった従来の主観的な採点方式から脱却する狙いで、22年から新ルールを採用する。100点満点の上限を撤廃。実施する技と順序を記入した用紙(コーチカード)を事前に提出し、技が認定されなければベースマーク(最低評価)となり大減点を受ける。一つ一つの技を点数で評価するフィギュアスケートを参考にした。チーム種目では男子選手が最大2人参加できるが、今大会で男子を起用する国はない。今大会からジャンプやリフトなど華々しい技を競うアクロバティックルーティンも加わった。
《12年ロンドン体操団体・内村の得点で再審要求》
○…抗議が増えて運営が妨げられるのを避けるため、他競技でも抗議に費用がかかることがある。12年ロンドン五輪の体操男子団体総合決勝では日本の最終種目あん馬を終えた合計得点は4位と発表されたが、最終演技者だった内村航平の得点が誤っていることに気づいたコーチ陣が審判に抗議。再審の要求に300ドル(当時約2万3000円)を支払った。約15分の審議の末に技の難度を示す演技価値点に0.7点が加算され、総合2位に繰り上がった。
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