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【甲子園】鶴巻二塁塁審が「神ジャッジ」連発 時間が4倍に感じる大舞台で判定する難しさ

スポニチアネックス / 2024年8月9日 23時59分

<南陽工・菰野>9回、打席を見る鶴巻二塁審(撮影・中辻 颯太)

 ◇第106回全国高校野球選手権大会第3日・1回戦   菰野6-2南陽工(2024年8月9日 甲子園)

 【夏の甲子園 光るジャッジ】スポニチ紙面では高校野球取材班が大会での好プレーを紹介する「光る君の光(こう)プレー」が掲載されている。ネット版のスポニチアネックスでは夏の甲子園を担当する審判員の「光るジャッジ」を元NPB審判員でアマチュア野球担当記者の柳内遼平記者(33)が紹介する。

 16年ぶり3度目の出場となった菰野(三重)が南陽工(山口)を6―2で下し、春夏通じて甲子園初勝利を挙げた。試合時間1時間55分の引き締まった試合を「光るジャッジ」が彩った。この試合で二塁塁審を担当した鶴巻審判員は2つも好ジャッジを披露。プロ野球の試合をさばくNPB審判員でも長い年月をかけて習得する「待つ」技術が光った。

 審判員で最も難しい技術の1つは「待つ」である。経験の浅い審判員は緊張やプレッシャーからジャッジが早くなりがちだ。正確性を高めるためには最後までプレーを見極め、正答にたどり着くまでのヒントを1つでも多く集めることが重要になる。記者のNPB審判員時代、早いタイミングでジャッジすれば、たとえ判定は合っていても先輩や指導員から「食いついたらアカン!」としかられたものだ。先輩の白井一行氏にも「セーフもアウトも同じタイミングでゆっくり出すことが大事」と教わった。

 この試合で鶴巻二塁塁審はとにかく「待つ」ことができた。まずは7回の南陽工の攻撃。無死一塁から三遊間の打球を遊撃手が二塁へ送ったが、送球が中堅方向に逸れ、二塁手の足がベースから離れた。ここで審判員の性としては「オフ・ザ・バッグ!(ベースから足が離れた)」のゼスチャーが頭をよぎるし、身体も自然と反応してしまうもの。ただ、このケースではベースの踏み直しが可能なタイミングで「そのままプレーを見守る」ことが正解。二塁手は一塁走者の到達より間一髪早くベースの踏み直しができたため鶴巻二塁塁審は「アウト!」の判定を下した。その最終のジャッジまで慌てることなく「待つ」ことができたため正答を導きだせた。

 また8回の南陽工の攻撃。2死一塁から盗塁を仕掛けるも完全にアウトのタイミング。だが、走者はベースのはるか手前でスライディングを「キャンセル」。ブレーキをかけるように止まり、そこから立ち上がって見事にタッチをかわした。タイミングは完全にアウトでも鶴巻二塁塁審は「食いつかず」にプレーを見極めてからノータッチと判断し「セーフ!」のジャッジを下した。

 早く判断しない、食いつかない。至ってシンプルなことだが、案外やってみるのは難しい。私がNPB審判員時代、1軍の試合に出場したときは、とにかく、とにかく「ゆっくりジャッジしよう」と意識した。試合の中で盗塁があり、意識の中では2秒くらいためてから「アウト!」としたつもりだったが、帰宅後に録画したビデオを見直すと0・5秒くらいで「アウト!」と腕を振っていた。そこで初めて自分が1軍の雰囲気に圧倒されていたことに気づいた。

 高校野球審判員にとって甲子園はこれ以上ない晴れ舞台。大観衆、そして全国中継されるTV中継がある中で「待つ」ことは難しいだろう。それでも鶴巻審判員が己を貫けたのは、技術への自信と卓越した精神力があったからに違いない。甲子園で誤審をしてしまえばSNSで袋だたきにされる時代。もっと称賛されるべきアンパイアリングだ、とネット裏の記者席から感じた。(元NPB審判員、アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)

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