高谷大地 勝者を抱き上げ、スタンドでは世界の人々と記念撮影…泣いて笑って「これが僕の歩んできた道」

男子74キロ級、高谷大地（左）は銀メダルを手に米国選手とカメハメ波？（撮影・平嶋　理子）

　◇パリ五輪第16日　レスリング（2024年8月10日　シャンドマルス・アリーナ）

　男子フリースタイル74キロ級の高谷大地（29＝自衛隊）が10日、決勝でラザンベクサラムベコビッチ・ジャマロフ（ウズベキスタン）にフォール負けし銀メダル獲得となった。五輪3大会連続出場の兄・惣亮が立てなかった五輪表彰台。金メダルには届かなかったが、快進撃で駆け上がり全身で楽しんだ29歳初五輪で、今大会レスリング男子に4つ目のメダルをもたらした。

　初五輪を楽しみ、全力で駆け上がって来た決勝。パリの闘いの最後は無念のフォール負けだった。

　「決勝でフォール負けするのも僕らしいかなと思いました。もう最高でした。こんないい経験が人生の中でできたことが本当に幸せでした」

　高谷が試合後、ジャマロフを高々と抱え上げ称える。スタンドからは大きな拍手が沸いた。その後はスタンドに駆け上がり妻だけでなく、各国のファンと記念撮影。雄叫びにガッツポーズ。最後まで高谷らしく。

　「これで少しでも小さい子から大人の方たちまで、少しでもレスリングをやりたいなと思ってくれれば、それにこしたことはないです」

　笑顔だった高谷の顔がクシャクシャになり、そして涙があふれだした。大きな兄の存在、結果が出ない日々…決してここまでの道のりは平たんではなかった。

　「本当につらい…24年のレスリング人生だったなと。そして最後に濃い自衛隊で闘った7年だったなと、いろんな思いがこみ上げてきました」

　悔しくないわけはない。ジャマロフがウイニングランをするマットの下で唇をかみ締めた。最後に、スタンドで言葉を交わした妻への思いを語った。

　「言葉はいらないっす。これが僕の、高谷が歩んできた道かなと思います」

　◇高谷　大地（たかたに・だいち）1994年（平6）11月22日生まれ、京都府出身の29歳。兄の影響で小1から競技を始める。京都・網野高から拓大に進み、13年全日本選抜60キロ級で初優勝。14年の世界選手権は65キロ級で初出場し7位、昨年は74キロ級で10位だった。自衛隊所属。1メートル66。3兄弟の三男で、次兄は五輪3大会連続代表の惣亮。