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井上和彦の衰えぬ声欲 声優デビュー50周年の70歳「気持ちはまだ折り返し」 3月に自伝出版

スポニチアネックス / 2024年8月14日 5時1分

インタビューで笑顔を見せる井上和彦(撮影・村上 大輔)

 「サイボーグ009」の島村ジョーや「美味しんぼ」の山岡士郎の声などで知られる声優界のレジェンド・井上和彦(70)がデビュー50周年を迎えた。今年3月にはキャリアを振り返る自伝「風まかせ 声優・井上和彦の仕事と生き方」が出版された。半世紀にわたり活躍してきたが、声優として大きな気付きを得た一つのきっかけは、趣味のウインドサーフィンだった。(山内 健司)

 「ウインドサーフィンがどうして水の上を走ることができるか分かりますか?飛行機と同じ理屈なんですよ」。本紙のインタビューに、屈託のない笑顔で前のめりに語り始めた。25歳の頃に始め、40歳を過ぎてからスクールへ通い原理も学んだ。

 「見えない風をつかんで走る快感が忘れられない」という。その「見えない風をつかむ」のは本業に通じる。舞台や映像の世界ではセットや場面の中にいる。だが、声の仕事はマイク一本が目の前にあるのみ。「実際にはないものを全部想像してつかまないと演じられない。ウインドサーフィンのおかげで、その感覚が鋭くなった」。演技力に想像力が加わり声はより究極なものに仕上がっていった。

 1973年にデビュー。その名が広く知れ渡ったのは79年に「サイボーグ009」の島村ジョーを務めた時。「二枚目の役が増える大きな転機となった」といい、ファンレターも段ボール5箱ほどが事務所に届くモテモテぶりだった。当時の人気ぶりなどは著書「風まかせ」に詳しくつづられている。

 「若い頃は職業を“声優です”と伝えても“(スーパーの)西友ですか?どこの売り場ですか?”と言われていた」と笑う。「“顔に自信がないから声優になりたい”なんて言われたりもしたのに、今やアイドルで憧れの職業になってきた」。人気の職業になったことに、社会的立場の変化も実感している。

 だが、変わらぬこともある。「昔も今も、先輩の技術を見て盗むことは一緒。僕の全ては盗みで成り立ってる」といい、技術は富山敬さん、八奈見乗児さんら先輩から学んだ。「自分からも何か盗まれて伝わるものがあればうれしい」と語る。

 「50年たった気はしてない。気持ちはまだ折り返し」。仕事への意欲は十分で「レジェンドって呼ばれるのは遺産みたいで嫌だ」と苦笑いを浮かべる。「声優はこちらから求めちゃいけない。役を頂く立場。それを素直に全うしたい」と謙虚に風に身を任せていく。

 「これでいいやって思ったらもう終わり。常に成長したいと思っていて、周りから変わってないと言われるのが理想」。持ち前の低い声を響かせた。野沢雅子(87)や羽佐間道夫(90)といった現役の先輩を冗談交じりに「化け物」「妖怪」と称しつつ、「自分もそうなりたい」と歩みは止めない。貪欲に声の仕事を欲する“声欲”を胸に、波を自在に乗りこなす。

 ≪5年ぶり舞台にワクワク≫デビュー50周年を記念した舞台「エニグマ変奏曲」が東京・銀座の博品館劇場で23~25日に上演される。舞台出演は5年ぶりで、声優の関智一(51)との2人芝居。「80分くらいあるのでせりふ量は相当ありますね。覚えなきゃ」とワクワクした表情で話す。「声の仕事、舞台、歌、どこでも表現するという点では一緒。体を鍛えて絞って舞台に立ちます」と意気込んでいる。

 ◇井上 和彦(いのうえ・かずひこ)1954年(昭29)3月26日生まれ、神奈川県出身の70歳。73年にラジオCMで声優デビュー。舞台、ナレーションなど幅広く活躍。洋画の吹き替えでは、デンマーク出身の俳優マッツ・ミケルセンがおなじみ。高校時代はボウリングに熱中しプロを目指した。最高スコアはパーフェクト。65歳過ぎてロードバイクを始め、5月に佐渡で210キロを走破。1メートル73。

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