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【内田雅也の追球】痛い敗戦に幸せを思う。

スポニチアネックス / 2024年8月15日 8時1分

<巨・神>4回、及川(左から3人目)がピンチを迎えマウンドに集まる阪神ナインと安藤コーチ(撮影・島崎 忠彦)

 ◇セ・リーグ 阪神0―4巨人(2024年8月14日 東京D)

 敗れた阪神の選手たちが帰りを急ぐころ、お立ち台に戸郷翔征と浅野翔吾が上っていた。

 お立ち台は戦前戦中の甲子園球場にもあった。1940―41(昭和15―16)年、召集を受けた選手が試合後に立ち、戦地に赴く決意を語った。「わが大君に召されたる……いざ征(ゆ)けつわもの日本男児」と『出征兵士を送る歌』が大鉄傘にこだました。

 阪神からも出征した景浦将、西村幸生……ら多くの選手が戦死している。野球への思いを抱きながら散っていった。

 いまの選手たちは幸せである。愛する野球のプロとして日々、白球を追っている。厳しい勝負の日常を味わえる。厳しいが、それが幸せなのだ。

 阪神は大事な一戦に敗れた。首位広島と4ゲーム差に開いた。それでもまだ望みがあるではないか。野球ができるのだ。

 試合は小さな傷から徐々に傷口が広がり、取り返しのつかない致命傷を負った。小さな傷とは4回裏2死無走者、先発・及川雅貴が大城卓三に0ボール―2ストライクから与えた四球である。

 2球で追い込んだ後、内角直球がボール。1―2から外角低めスライダー、外角直球と外れた。フルカウントからのスライダーは高く浮いた。

 2死一塁から二塁打、四球で満塁。迎えた高卒2年目の浅野翔吾に左翼スタンドに運ばれた。最悪の満塁本塁打だった。

 問題はやはり、大城への四球だろう。何度か書いた。名捕手だった梨田昌孝はカウント0―2から3―2に至る投手心理を「狙ってボール、力んでボール、焦ってボール」と著書『戦術眼』でうまく表現している。

 0―2からボール球を狙って外れる。1―2から「決めよう」と力が入ってボール。平行カウントとなり「せっかく0―2だったのに」と気が焦って3―2となる。もう優位も何もない。やはり慎重のなかにも大胆さを欠いては傷になる。

 巨人監督・阿部慎之助は今回の3連戦初戦で「相手も必死」と言った。戦時中42年に公募した「国民決意の標語」に「頑張れ! 敵も必死だ」があった。福島県の女性の応募らしい。「今日も決戦、明日も決戦」はセ3強の心境か。「さあ、二年目も勝ち抜くぞ」は連覇に挑む阪神の気概だ。

 真夏の9連戦を終えた。試合のない、きょう15日は終戦の日。野球ができる幸せをかみしめ、再起したい。 =敬称略= (編集委員)

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