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「光る君へ」倉本一宏氏“時代考証は校閲”も恋物語に「不思議な感銘」40年来の疑問も氷解!後半展望は?

スポニチアネックス / 2024年8月18日 20時47分

大河ドラマ「光る君へ」第31話。まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)は月を見上げ…(C)NHK

 ◇「光る君へ」時代考証・倉本一宏氏インタビュー

 女優の吉高由里子(36)が主演を務めるNHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜後8・00)は18日、第31回「月の下で」が放送され、藤原道長(柄本佑)の要請を受けて主人公・まひろ(紫式部)がついに「源氏物語」を書き始めた。今作最大のクライマックスを迎え、物語は後半へ。時代考証を担当する歴史学者・倉本一宏氏(66)に今後の見どころなどを聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛~僕を忘れる君と」などの名作を生み続ける“ラブストーリーの名手”大石静氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ63作目。千年にわたって読み継がれる「源氏物語」を紡ぎ上げた女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となる。

 平将門を主人公にした1976年「風と雲と虹と」に次いで大河史上2番目に古い時代を描く今作。日本古代政治史、古記録学を専門とする倉本氏が大河の時代考証を務めるのも初となった。

 時代考証の立ち位置について、倉本氏は「脚本家さんと時代考証の関係は、出版の世界で言えば、著者と校閲さんに近いと思います。編集者にあたるのは、制作統括の内田ゆきチーフ・プロデューサー。私が本を書く時、校正の段階で校閲の方からご意見を頂きます。でも著作権は私にありますから、採り入れて書き直すこともあれば、そうしないこともあります。『光る君へ』も同じで、著作権は脚本家にあります。だから、考証会議でお伝えした私の考えをドラマに反映させるのも、しないのも、著作権のある大石さんや制作側の裁量です。そこは視聴者の皆さんにご理解いただければと思います」と説明。

 特に、古記録に残されていない紫式部と道長の“恋愛パート”に関しては、倉本氏は意見は述べるものの、ストーリー自体にはほぼノータッチ。とかく話題になる大河ドラマにおける「史実と創作」の兼ね合いに理解を求めた。

 もちろん、ドラマ(創作)は否定していない。SNS上の視聴者反応を見ると「まひろと道長の出会い、別れ、再会に心を動かされている方が多いと思います。本来は皇位継承や権力闘争、宮廷政治を描いた『源氏物語』も、1000年前に読んで感動した読者のほとんどは恋愛小説として見ていたはずです。今も昔も変わらないんだなと、不思議な感銘を受けました。今回、時代考証を担当させていただいて、初めて分かったことです」と明かした。

 藤原為時(岸谷五朗)がなぜ大国の受領である越前守になれたのか、40年来の疑問も解けた。

 為時が下国の受領である淡路守に任じられたことを嘆いた漢詩「苦学寒夜 紅涙霑袖 除目春朝 蒼天在眼」(苦学の寒夜は涙が袖を潤し、除目の翌朝は蒼天が眼にある)に、一条天皇が心打たれて涙し、それを見た道長が越前守に任じられた源国盛に辞表を書かせて国替えした、という有名な説話がある。

 「そんな理由で一度決まった人事を変えることがあり得るのか、40年ぐらい不思議だったんですけど、今回、大石さんのリサーチャーの方とやり取りする中で、やっと分かったんです。この一節は五言でも七言でもなく、韻も踏んでいないので、そもそも漢詩としての形式ではない。除目(人事)が終わってから、天皇に漢詩を送るということもあり得ない。となると、これは為時が最初に淡路守を申請した時の申文の一句で、それが公卿たちの目に留まった、そして宋人対策として中国語(宋語)が堪能な為時が抜擢された、と考えられます。ドラマでは、まひろが為時の名を騙って申文を書き、道長が筆跡に気づくという設定(第20回)になりましたが、長年の疑問が解決したことで、時代考証をして本当によかったなと思いました」

 今後のキーパーソンに挙げたのは、藤原彰子(見上愛)。現状は「仰せのままに」を繰り返しているが「一条天皇の後継者をめぐって、定子(高畑充希)が産んだ敦康親王を養育していた彰子は、道長と意見を異にして、道長を恨むことになります。一条天皇の後、三条天皇(木村達成)の時代になると、道長と険悪な仲になり、次の後一条天皇の時代になると、国母として権力を握ります。彰子の成長がどのように描かれるのか、詮子(吉田羊)のように変貌していくのか、楽しみにしています」と期待した。

 道長については「江戸時代から天皇を蔑ろにした“悪人”であるというのが定説で、いまだにそのイメージを持つ方もいますけど、『御堂関白記』を読むと、全然そういう人ではないんです。ただ、『源氏物語』の光源氏のように、だんだん権力者として変貌していくのかどうか、そして『この世をば(我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも 無しと思へば)』の歌にどうつながるのかも、注目しています」。後半も息つく間もない展開になりそうだ。

 ◇倉本 一宏(くらもと・かずひろ)1958年(昭和33年)、三重県津市生まれ。83年、東京大学文学部国史学専修課程卒業。89年、同大学院人文科学研究科国史学専門課程博士課程単位修得退学。97年、博士(文学、東京大学)。国際日本文化研究センター(日文研)名誉教授、総合研究大学院大学(総研大)名誉教授。主な著書に「一条天皇」「現代語訳 小右記」(吉川弘文館)「藤原道長『御堂関白記』全現代語訳」「藤原行成『権記』全現代語訳」(講談社学術文庫)「小右記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典」「権記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典」(角川ソフィア文庫)。新刊「平安貴族列伝(SYNCHRONOUS BOOKS)を5月、「平安貴族の心得 『御遺誡』でみる権力者たちの実像」(朝日新書)を6月、「平安時代の男の日記」(角川選書)を7月に刊行するなど、精力的な活動が続く。

 【参考文献】倉本一宏「紫式部と藤原道長」(講談社現代新書)、NHK大河ドラマ「光る君へ」公式サイト

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