【甲子園】京都国際、狭い練習場で磨いた個の技術 小牧監督「できないこと多い代わりに個人練徹底的に」
スポニチアネックス / 2024年8月24日 5時3分
◇第106回全国高校野球選手権 決勝 京都国際2-1関東第一(2024年8月23日 甲子園)
【記者の目】校舎に隣接する京都国際の練習場は右翼65メートル、左翼70メートルと、とにかく狭い。内野に黒土が入ったのは3年前の21年。一方で恒例の練習だった壁当ては、校舎改修で新しくなった壁を傷つけないため今年から禁止になった。ある練習日、所狭しと動き回る選手を見つめながら小牧憲継監督は「ないものをねだっても仕方ないしねえ」と自虐的に笑いつつ「でもね…」と続けた。
「できないことが多い代わりに個人練習は徹底的にできるから」
手狭な練習環境と、「野球は究極の個の勝負」と考える小牧監督の野球観は相性がいい。フリー打撃を一切行わないのが、その象徴だ。「球が屋外に出て、なくなるから」と冗談めかすが、本音は「打ってくださいと投げた球は意味がない。全力勝負しないと力がつかない」。打席に立つのはシート打撃などの実戦形式練習のみ。一日数打席と少ない勝負で把握した課題に素振りやマシン打撃で向き合わせる。
技の追求が、日本一の布石になった。例えば遊撃手・上野響平(現オリックス育成)が19年ドラフト3位で日本ハムに指名されると、「遊撃手の育成にたけている」との評判が近畿圏外にまで広まった。うわさを耳にした現主将の藤本陽毅は、福岡出身ながら学校にファクスを送って進学希望を伝えた。左腕の森下瑠大(現DeNA)が21年夏の甲子園4強に導くと、中崎琉生、西村一毅ら好左腕が入学。スペースがないため走り込みはゼロ。2キロのメディシンボールを使った計15種類の練習など最新設備を必要としない独自の投手育成法で、最速140キロ超の投手を次々と生む土壌が出来上がった。
選手の成長をやりがいとする小牧監督は、「練習量が減るから、甲子園に行かない方がうまくなる」と考えていた。それは聖地を経験して変わった。「子どもたちって甲子園での、たったワンプレーで、驚くほどうまくなる」。練習場が狭い関係で、選手は1学年20人。与えられた環境で徹底して個の技術を磨き続けた結果、剛球を平然と打ち返し、大一番でも堅守を続ける最強軍団が完成した。 (アマチュア野球担当・河合 洋介)
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