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【内田雅也の追球】再生への8番バント

スポニチアネックス / 2024年8月26日 8時0分

<広・神>4回無死一塁、木浪は投前送りバントを決める(投手・森)(撮影・大森 寛明)

 ◇セ・リーグ 阪神7―5広島(2024年8月25日 マツダ)

 どこか懐かしい思いがした。久しぶりだろう。阪神4回表無死一塁、8番の木浪聖也が送りバントを決めたことだ。

 次打者は投手の大竹耕太郎。普通はまず木浪に打たせ、安打や進塁打ならば好機拡大、凡退でも投手に送らせる。

 これを監督・岡田彰布は嫌う。バントは投手よりも野手の方が成功確率が高い。8番の強打には併殺打の危険も伴う。

 評論家時代からよく話していた。「まず打たせて、あわよくば――という考え方が嫌いなんよ。墓穴を掘り、流れを失う」。自ら「マイナス思考」という岡田理論である。それなら投手凡退も見越した「2死」を覚悟のうえ、8番に送らせ、1番の近本光司にかける。

 この8番バントが昨年はよく決まった。木浪が出て投手が送る場合もよくあった。近本はよく還した。木浪は「恐怖の8番」と呼ばれた。

 この夜も1死二塁から大竹遊ゴロで2死三塁。近本が中前適時打して貴重な追加点を刻んだ。

 岡田らしい、よみがえった作戦だが、隠れた狙いもあった気がする。

 木浪は前夜、1点を追う7回表無死一、二塁で送りバントを失敗していた。敗戦後、岡田は「バントがすべてよ」と話していた。

 一夜明けた試合前練習中、ただ一人、バント練習する木浪の姿があった。バックネット前で打撃投手に投げてもらい、繰り返していた。

 岡田は苦い思いを早く払拭させたかったのではないか。打たれた救援投手を翌日など、すぐに起用する用兵も使う。成功へ導く采配である。

 昨季20個だった木浪の犠打は今季、今月13日以来8個目だった。バントを決めた時、ベンチでは佐藤輝明や選手たちが祝福でわき返っていた。近本が適時打した時、木浪は左腕を突き上げて笑っていた。「一丸」の空気が見える光景だった。

 冒頭に懐かしいと書いた。木浪のバントが得点を呼んだこと以上に、優勝に突き進んでいた昨季のような雰囲気が伝わってきたからだ。

 どこか空気がよどんでいた時もあった。岡田が、コーチ陣が、選手たちが望むのは野球で物を言う、空気の再生である。

 1回裏に併殺を逃して2失点。7回裏に失策から3失点。ミスもあったが、今は勝つか、負けるかの結果だ。広島3連戦に勝ち越し、また希望をつないだ。 =敬称略= (編集委員)

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