墨のみで絵画描くアーティスト・なごん単独インタビュー 個展では完売続出
スポニチアネックス / 2024年8月28日 19時41分
力強く躍動感のある書道作品から、背景や木々の葉ひとつひとつまで繊細に描かれた風景画。これらが全て墨のみで描かれているというのだから驚きだ。
描いたのはアーティストのなごん(26)。幼少期からの趣味である書道をアートに昇華し、伝統文化を自分のスタイルで表現し続けている。8月15日から21日まで東京・GINZA SIXで開催した個展「NAGON solo exhibition ink brush art - influence -」の期間中、本紙の取材に応じ「自分の“好き”を明確に描いていきたい。それをアーティストとして作品にして伝えていくことが、自分のやっている意義だと思っています」と語った。
小学校低学年から書道を始めた。「書き初めの時に、“字が半紙を飛び出すほど大きい”という理由だけで区長賞に選ばれたんです。きれいに書くのではなく自分らしく表現したものが認められた瞬間でした。それがすごく楽しいという感覚になり、お小遣いで書道セットを買って始めました」。教室に通っていたわけではなく、友人の母親から軽く指導は受けただけで、基本的には独学で取り組んだ。
好奇心旺盛な性格で、以降もバスケ、サッカー、ダンス、演技に挑戦。大学時代はアナウンサーを目指し、学内ミスコンテストでは準グランプリに輝いた。夢に向かって順調に歩みを進めているように思えるが、自身の中では違和感を覚えていたという。「アナウンススクールに通ったりしていたのですが、同じ“表現”という分野の中でも、役者もアナウンサーも台本がある。何かを読み上げて、というのが私に合っているかと言われたら、あまりしっくり来ていなかった。何もない状態から表現する方が好きなんだということに気づきました」。幼少期から途絶えることなく続けていた書道を生かしたアーティストを志した。
当初は文字を書いた作品がメインだったが、「文字は直接的に情報が入ってしまう。例えば“情熱”と書いたら“情熱をイメージした作品なんだな”と伝わってしまうのがつまらなくなった。それなら同じ墨を絵で表現して、受け取り手は何を感じてもいい作品を作りたくなった」と1年半ほど前からより表現の幅が広い絵を中心に描くようになった。
とはいえ、絵についての知識があったわけではない。本や映像から知識を吸収し、実験のように試行錯誤を重ねていった。「稼がなきゃいけないと焦ってやっていたところがあって、楽しかったかというと半分苦しかった」と本音を漏らす。
それでも、作品を見た客の反応は上々だった。昨年9月に原宿で初の個展を実施。インスタグラムで作品の制作過程を公開したことで海外を中心に注目度が上昇。展示した約30点の作品が完売するなど大盛況となった。「“ファンです”とか“いつも見てます”という言葉を直接いただいたのが初めてだったので…複雑な感情でした」とはにかみ「自分が好きなものを追求して、自分の好きだけを考えてやってきたことが、他の方の人生の中でも好きになっている瞬間が、新しい感覚でとてもうれしかったです」と当時の感動を振り返る。
GINZA SIXでの個展でも作品は完売。開催期間中はほぼ全ての時間会場を訪れ、来場者と言葉を交わした。「会話が楽しいというのもありますし、作品は自分が描いて完成ではなく見てくださる方がいて成り立つもの。その瞬間を見るためにも会場に来ています」とうなずく。
今後の目標を聞くと「一つは海外挑戦。海外での展示会や海外向けに大きい作品を作ってみたい。あとは展示以外にも色んなメディアに出たり、ブランドやゲームとコラボして作品の幅を広げたい」と即答。ビジョンだけでなくアーティストとしての姿勢も明確だ。「何も制限せず、自分の好きなことを追求したい。何を描きたいというよりも、そのときに感じている何かがあるので、それをそのまま表現していきたいです」。これからも変わらず、何にも縛られることなく赴くままに筆を走らせていく。
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