プレーオフへ、居場所を確立した元西武右腕「人間としても成長し、野球でも向上できた」貴重な異国での経験
スポニチアネックス / 2024年9月7日 14時3分
重要な場面でNPB出身選手同士の対決が実現した。ニューヨークのシティ・フィールドで4日(日本時間5日)に行われたメッツ―レッドソックス戦は、7回まで3―2とメッツがリード。8回1死一、二塁の場面でマウンドには元西武のリリーバー、リード・ギャレットが立ち、吉田正尚と対戦した。
ゲームの行方を左右する場面で、吉田はカウント1―1からのカットボールを打って二ゴロ併殺打。試合はメッツがその裏に点差を広げて勝利した。日本では10打数2安打だったギャレット対吉田の対戦が大きな分岐点になった印象だった。
「西武時代、160km近くを投げていましたけど、真っ直ぐ、スプリットのピッチャーだったので、カットはあまり見たことはなかった」
殊勲の好投を見せた翌日。吉田が語っていた日本での印象を伝えると、ギャレットは「日本での1年目はカットも少し投げていたんだけどね。とにかくいい仕事ができてよかったよ」とうれしそうに笑った。
活躍はこの場面に限ったことではなく、今季のギャレットはメッツの中継ぎとして貴重な役割を果たしている。自己最多の45試合に登板し、50イニングで71奪三振、防御率3・60。故障離脱していた時期を除けば貢献度は高く、プレーオフを目指すチームで不可欠に近いリリーバーとして確立した印象がある。
「昨季終盤に得た自信を持って今季に臨むことができた。そして今シーズン、メッツではこれまでで最も機会を与えてもらえたのが大きかった」
今季の成功の理由をそう説明するギャレットは、同時に吉田が指摘したようにカットボールに磨きをかけたのが好影響を及ぼしていることも認めていた。日本では豪腕の印象が強かったとされる右腕だが、31歳になった今ではスプリット(全投球の27・6%)、カットボール(同23・6%)、スイーパー(同19・9%)、フォーシーム(同16・2%)、ツーシーム(同12・7%)という5つの球種をバランスよく操るようになった。こうやって成熟するまでに、日本で過ごした経験にも大きな意味があったのだと言う。
「日本では家族に会えないのが辛かったけど、貴重な時間だった。向上するためには、あえて快適な場所から出る必要があった。人間としても成長し、おかげで野球でも向上できたのだと考えているよ」
他にも西武の豊田清投手コーチ(当時)からスプリットの新たな握りを教わったこと、自身の持ち球を信じて投げる大切さを知ったこと、言葉が通じないチームメイトとの交流の方法を学んだことなど、日本で得たものを熱っぽく語り続けた。今でも当時の通訳とは連絡を取り合い、西武の近況も追いかけているという(今季の低迷についても知っていた)。それらの言葉、エピソードから、日本に対する思い入れは伝わってくる。
「これからも可能な限り長くベースボールをプレーしたい。メジャーリーグに長くいたいね。それが私にとって最も重要なこと」
謙虚な目標を述べるリリーバーの今後が楽しみだ。メッツは熱いワイルドカード争いの真っ只中におり、その中でギャレットが重要なマウンドを任されることは多いに違いない。その時、日本で学んだという「ヘイジョウシン(平常心)」がきっと生きてくるはずだ。(記者コラム・杉浦大介通信員)
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