真田広之万感「ミラクル起こせた」 日本語7割「SHOGUN 将軍」でエミー賞史上最多18冠の快挙

日本人初快挙！エミー賞主演男優賞を獲得した真田広之（AP）

　米テレビ界のアカデミー賞と言われる最高の栄誉「第76回エミー賞」の授賞式が15日（日本時間16日）、ロサンゼルスで行われ、真田広之（63）が主演・プロデュースした「SHOGUN　将軍」（日本ではディズニープラスで配信）がドラマシリーズ部門の作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞の主要部門を独占した。真田は日本人として初めて主演男優賞を受賞。今月8日に発表された技術・制作部門を合わせ史上最多の18冠という歴史的快挙を達成した。

　「エミー・ゴーズ・トゥ・ショーグン」。ドラマシリーズ部門で作品賞のタイトルが読み上げられた瞬間、真田らは一斉に立ち上がってガッツポーズとハグで喜びを爆発させた。浅野忠信（50）、平岳大（50）、西岡徳馬（77）も満面の笑みを浮かべ、3人で肩を組んでステージに登壇した。

　真田が米国に拠点を移してから20年余でたどり着いた至福の時。「これまで時代劇を継承し支えてきた全ての方々、そして監督や諸先生方に心よりお礼を申し上げます。あなた方から受け継いだ情熱と夢は海を渡り、国境を越えました」。日本語でのスピーチが英訳されると、会場からは割れんばかりの拍手。そして「サンキュー・ソー・マッチ」と叫びにも近い歓喜の言葉で締めくくった。

　ジェームズ・クラベルさんの小説「将軍」が原作で、戦国時代が舞台。撮影はカナダで行われた。真田は徳川家康がモデルの吉井虎永を演じ、さまざまな謀略が渦巻く関ケ原の戦いの前夜を描く。プロデューサーとしても俳優の所作や殺陣だけでなく、衣装や小道具なども細かくチェック。日本から時代劇の精鋭スタッフを呼び寄せ、それがハリウッドの技術力と融合した歴史スペクタクルに昇華させた。せりふの7割が日本語という挑戦だったが、史上初めて英語以外の作品で作品賞の受賞を果たした。

　同じ小説を原作にした80年の「将軍　SHOGUN」では、三船敏郎さんが同じ主演男優賞の候補になったが受賞は逃した。尊敬する三船さんと同じ役を演じるのは「大きな重圧だった」という。それでも、“世界のミフネ”を超える、日本人初戴冠を果たした。

　主演賞の受賞時は壇上で「本当に誇りに思う」と英語で喜びを口にした。「東洋と西洋が出合う難しいプロジェクトだったが、一致団結してミラクルを起こすことができた。私を信じてくれてありがとう」と関係者に感謝の思いをささげた。授賞式後に行われた記者会見でも、「本当に信じられない」と喜びをかみしめた。

　制作・技術部門と合わせ史上最多の18部門で受賞。既にシーズン3まで制作が決定しており、真田はシーズン2を日本でも撮影したい意向を明かしている。エミー賞の歴史を塗り替えた時代劇が、本場の日本に“凱旋”する日が待ち遠しい。

　▽SHOGUN　将軍　「関ケ原の戦い」前夜が舞台の歴史スペクタクルドラマ。米ディズニー傘下のFX制作。有力大名に追い詰められて窮地に立つ、徳川家康がモデルの武将吉井虎永（真田）が、生き残りを懸けて策略を巡らせる。伊豆に漂着し、虎永の家臣になる英国人航海士、按針の視点を通じて武家社会の風習が描かれるほか、通詞の戸田鞠子（サワイ）らが絡む複雑な人間ドラマが繰り広げられる。2月に配信が開始されると、6日間で900万回視聴された。日本ではディズニープラスで配信中。

　▽エミー賞　米テレビ芸術科学アカデミーが主催し、配信を含むテレビ分野のうち、ドラマやバラエティー番組などの優れた業績を称える賞。1949年に第1回授賞式が開かれた。受賞者には背中に翼の生えた女性を表した金色の「エミー像」が贈られる。名称は、かつてテレビカメラの部品として広く使われ、画質の向上に大きく貢献した撮像管の一種の愛称「イミー」に由来。映画のアカデミー賞、音楽のグラミー賞、演劇のトニー賞と並ぶ米4大エンターテインメント賞。

《三船さん主演作は「ショーグン現象」に》　同じ原作から生まれた三船敏郎さん主演の「将軍　SHOGUN」は、1980年に米NBCで制作・放送された。平均32.6％の高視聴率をマークし「ショーグン現象」と呼ばれる日本ブームを巻き起こした。ヒロインは島田陽子さんが演じた。島田さんはこの作品で日本人として初めてゴールデン・グローブ賞の主演女優賞を受賞。国際的女優として名をはせた。