阪神・大竹 涙の10勝「今年はいろいろ言われてきたけど…」 球団左腕初の移籍1年目から2年連続2ケタ

＜神・ヤ＞5回、オスナを三振に取り吠える大竹（撮影・中辻　颯太）

　◇セ・リーグ　阪神3―0ヤクルト（2024年9月16日　甲子園）

　阪神・大竹が泣いた。6回無失点で球団5人目の「移籍1年目から2年連続2桁勝利」について、ベンチ裏からクラブハウスに通じる通路で報道陣から質問が飛んだ時だ。

　「今年は無理だろうとか、いろいろ言われてきたけど…」

　顔をしわくちゃにし、こみ上げるものを必死で我慢した。30秒の沈黙の間、さまざまな思いが駆け巡った。昨オフに野球人生で初めて左肩に違和感を覚えた影響で、前半戦は望むような結果を得られず。ネット社会の雑音も届いた。ようやく絞り出した言葉に、感謝の思いがこもった。

　「うまくいかないことの方が多かったけど、周りの支えがあって10勝まで来られた」

　毎回走者を背負って迎えた同点の5回に大きな試練が訪れた。2死から、今季5割を打たれているサンタナを3打席連続で歩かせ、続く村上も四球とした。苦しく映る投球に見えて、冷静でいた。

　「安易に甘いところに投げて長打を食らうくらいなら、次の打者で勝負しようという気持ちは、正直あった」

　前の打席も打ち取っているオスナを、チェンジアップで空振り三振。マウンドで吠えた。無理な勝負をしないことが、12勝した昨季からの成長。「確率を考え、わざと歩かせる時がある。与四球が増えたのはそのせい」。自己最多5四球は、勝負の取捨選択ができていた証拠だ。初の3者凡退を奪った6回に味方が勝ち越しに成功。初回の前川の美技にも助けられ、耐えて耐えて耐えしのいだ。

　体調不良を抱えた8月18日中日戦で3回KOを食らった。岡田監督から試合中に初めてもらった一言が支えになった。「次も普通にいくからな、と。打たれたのに、登板を約束してもらえたことで気持ちを切り替えられた。監督の言葉は重みが違う」。意気に感じ、そこから3連勝。ソフトバンクからの移籍と同時に、監督に就任した指揮官の期待に応えるべく、「個人成績よりも、チームのために投げることが大事」と使命感に燃えている。（倉世古　洋平）

　○…大竹（神）が3連勝で今季10勝目。阪神移籍初年度の昨季も12勝で2年連続2度目の2桁勝利。阪神に移籍加入の投手が初年度から連続シーズン2桁勝利は19、20年の西勇に続く5人目で、左投手では初めて。過去4人は前所属球団でも2桁勝利しているが、大竹は阪神での2度だけ。22年オフの現役ドラフトを経て頭角を現した。