序ノ口・蒼富士が5連勝「足が震えた」よみがえった1年前の悪夢…再起の原動力は熱海富士への感謝
スポニチアネックス / 2024年9月17日 6時52分
◇大相撲秋場所9日目(2024年9月16日 両国国技館)
東序ノ口16枚目の蒼富士(21=伊勢ケ浜部屋)が、東序二段91枚目の嶋村(23=荒汐部屋)との全勝対決を制して5連勝とした。立ち合い鋭く踏み込んで低く当たるとすぐに引き落とし。わずか1秒で勝負を決めた。
この日の取組前、今までにない緊張感と恐怖心にさいなまれていた。「出番前、勝手に足が震えてきた。変な感情が入っていた」。1年前の悪夢がよみがえっていた。ちょうど1年前の秋場所9日目、序二段の取組で左膝を負傷。前十字靱帯断裂、内側側副靱帯断裂、半月板損傷、外側側副靱帯損傷で全治1年の重傷だった。2度の手術、4場所連続全休を経て今年の名古屋場所で前相撲から復帰。その時も恐怖心と闘っており、最初の取組後には「立ち合い構えた瞬間、ケガした時のことがフラッシュバックした」と話していた。
場所前には実戦稽古も再開できるようになり、1年ぶりに国技館の土俵に上がった今場所。順調に白星を積み重ね、4連勝で“魔の秋場所9日目”を迎えた。「勝ち越し懸かった日よりも緊張した。前相撲の時よりも怖かった。意識しないようにはしていたけど…」。体が自然と思い出してしまった。それでも取組が始まれば、懸命なリハビリで鍛えてきた実力を発揮。恐怖心に打ち勝った。
昨年秋場所は、付け人を務める熱海富士が再入幕で大活躍した場所。途中休場したため、熱海富士が優勝争いの中心にいた後半戦の土俵、そして千秋楽の優勝決定戦にも立ち会えなかった。翌九州場所も熱海富士は千秋楽まで優勝争いに絡む大活躍。その時は、手術後の療養のため神奈川県横須賀市の実家に帰っていた。「熱海関は優勝争いの最中でも、ケガした自分に一番寄り添ってくれた」。常に気に掛けてくれた兄弟子へ感謝。リハビリ中は再び土俵に立つことを目標とし「早く付け人に戻りたい」と恩返しを誓っていた。
熱海富士は「あの時は焦った」と1年前を振り返る。厚い信頼を寄せる付け人のアクシデントに動揺しながらも、優勝争いの先頭で勝ち越しを決めた日だった。大ケガを乗り越えて土俵に帰ってきた元付け人の5連勝に、熱海富士は「なんか…うれしいっす」と感慨深げだった。
序ノ口の全勝は、蒼富士と豪聖山(19=武隈部屋)の2人に。最低限の目標としていた勝ち越しを既に達成している蒼富士は「とりあえずケガしないこと。全力で頑張りたい」と次の目標を掲げて意気込んだ。「こうしてまた相撲が取れて、戻って来られたことがうれしい」。土俵に上がれる喜び、そして感謝の思いを胸に、残り2番も白星を重ねて序ノ口優勝へと向かう。
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