【内田雅也の追球】史上初となる「打倒・巨人」を果たしての優勝へ 岡田監督「本懐」の時は近づいている
スポニチアネックス / 2024年9月18日 8時2分
猛虎魂と言えばいいだろうか。阪神がいま挑んでいる連覇には、歴史的に大きな意味のある優勝がかかっている。
巨人と争い、競り勝っての優勝である。セ・リーグ各球団は先の7連戦を終え、勢力図が分かれてきた。巨人と阪神による優勝争いと、広島とDeNAによる3位争いという構図だ。阪神(および、昔からの阪神ファン)には願ってもない好機が到来している。
なぜなら、阪神は過去、巨人と争って――つまり競り合って――優勝を勝ち取ったことがない。2リーグ制となった1950(昭和25)年以降、阪神が優勝した6度のシーズン、1962、64、85、2003、05年、そして昨年は、いずれも巨人が3位以下に沈んでいた。いわゆる優勝争いという点で、阪神が巨人を打ち負かした経験がないのである。
逆に巨人優勝・阪神2位はいくらもある。2リーグ制以降で数えてみれば実に16度もあった。
52~59年の8年間のうち6度、巨人V9時代の68~73年の6年間のうち5度もある。「万年2位」と呼ばれ、巨人の引き立て役に甘んじてきた。
戦前、1リーグ時代に巨人2位での優勝を経験していた「ミスター・タイガース」藤村富美男も2リーグ制での優勝を経験していない。吉田義男も小山正明も村山実も阪神でリーグ優勝した時、争った相手は大洋(現DeNA)だった。江夏豊、田淵幸一は優勝できずに移籍していった。「青春だった」と口をそろえる阪神時代は毎年のように、巨人に苦汁をなめて過ごしたのだった。
巨人に後塵(こうじん)を拝してきた年月について、これまで幾度か書いてきた。08年には13ゲーム差を逆転され、優勝を逃した。今も監督の岡田彰布が監督辞任に至っている。
国際日本文化研究センター(日文研)所長を務める井上章一が『阪神タイガースの正体』(ちくま文庫)で書いている。「親分」鶴岡一人率いる南海(現ソフトバンク)が59年の日本シリーズで巨人を破り、日本一となった。<南海は御堂筋のパレードで泉岳寺への凱旋めいた感動を味わった><阪神ファンの忠臣蔵幻想は残存し続ける>というわけである。
幼いころから阪神ファンだった岡田は今季開幕前「やはりライバルは巨人」と予感していた。積年の思いを晴らす、本懐を遂げる時が来ているのである。 =敬称略=
(編集委員)
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