すゑひろがりず(2)周囲も自分たちも予想していなかったM-1決勝進出!「これでバイト辞められる」
スポニチアネックス / 2024年9月30日 14時21分
未来が大きく開けたた狂言風漫才。ただ、正統にはほど遠いスタイルのため、飽きられるスピードも早かった。そんな時に大きな転機となったのが2019年「M-1グランプリ」決勝進出だった。
【すゑひろがりずインタビュー(2)】
◆◆異色だからこその苦労◆◆
―しばらくは低空飛行が続くんですね?
三島「南條と2人になってからも全然変わらずでした。もちろん実力もですが、まだケツに火がついてなかったというのもあるかもしれないです」
南條「バイトして、一応メシは食えて、なんかフリーターみたいな感じです。プロとしての意識が低かったという面もありましたね。一応、単独とかもやって、少ないお客さんでもちょっとウケたら、ああウケた、ウケたとか思ったりして。そうこうしてると同期がパンと売れたり、才能ある後輩が出てきたりすると、あれ?ヤバいぞ、おれらみたいになったりして。ほんま情けなかったです」
三島「それからまあ、着物になってから上向くんですけど、劇場では他のコンビより飽きられるのは早かったですね」
南條「着物でフォーマットが同じなので、こっちは違うネタのつもりでも、その違いを分かってもらうのが難しくて」
三島「劇場の担当にも、また同じかーと思われるケースが多くて。少しずつ評価も下がって。じゃー東京行こか、となって」
南條「東京でも最初はいいんです。でも、大阪と同じで、また飽きられるようになって。劇場オーディションも受かったり受からなかったりで。そんなときにM-1でした」
◆◆あの日で変わった◆◆
―8位と決して高い順位ではなかったですけど、やはり大きかったんですね。
三島「あの日で変わりましたね」
南條「この狂言ネタを初めてやった日と、M-1決勝がターニングポイントでしたね」
―M-1決勝に出た後、やはり手応えは感じられたんですか?
三島「8位やったので、これで売れた!とは思わなかったです。ただバイトとかは辞められるなとか、営業とかは増えるやろな、とは思いました」
南條「仕事は増えるやろな、とは予想はしても売れる感じとは思ってなかったですね。ミルクボーイさんが優勝して、ぺこぱとか凄かったんで、ああいうのが売れるのかとは思いましたね。爪痕は残したけど、引っ張りだこという感じではないやろなあと思ってました」
三島「準決勝に残ったのも初めてで、楽器持ってるし、このしゃべり方で決勝残るはずがないと思ってました。でも、配信とか始まってたんで、そこから世に出ていく人もいたんですよ。ぼる塾が3回戦ですごい注目されたみたいに。まあ、そこ狙いやなあと言ってたんですけどね。ところが、準決勝の時にウケがよくて、出番とかも良かったので、なんか風が吹いてるなあとは思ってました。発表の時に最後に名前を呼ばれて、周囲もまさかぼくらが行くとは思ってないから、“え、いくんや、こんな漫才で?”みたいな空気はありましたね(笑い)」
―M-1で売れたからこそ難しかったこととかはあります?
南條「番組とかでも、普通にしゃべっていいのかな?ボケとかツッコミとかも狂言風でやらなあかんのかなとかはしばらく戸惑いました。けどまあ、このキャラをずっとやり続けるのは無理なので、出し入れをするようにはなりました」
三島「最近は和風なこともまったく言ってないこともありますね。素の自分を出せるようにはなっています。この和風の鎧を着て戦ってきたけど、鎧を脱げる状態になってきた感じですね」
―舞台でも着物を脱がれるときもあるのでしょうか?
南條「ネタをやるときはこの姿です。それは変わりません。ただ、大宮の劇場メンバーとフリートークのような形で出る時はけっこうTシャツとかが多いですね」
◆◆大宮の今を地元大阪で◆◆
―今回、マヂカルラブリー、囲碁将棋、タモンズら大宮セブンで劇場10周年を記念したライブがNGKで開かれますが(11月3日)、こちらの劇場付きになられて何年になるんでしょうか?
南條「6年目かな?最初は大宮でやってますねん、と言ったらエラいところでやってますねえ、と言われる感じでした(笑い)。東京からもちょっと離れているので」
―でも、最近はこの劇場付きの方々がすごい勢い。やはりマヂカルラブリーがその流れをつくったといえるんでしょうか?
南條「そうですね、やっぱりマヂラブは柱だとは思いますね」
―そういう意味では勢いのある劇場でやっているというお気持ちはあるんでしょうか?
三島「というか、勢いがなかった頃からやっているんで、こんな変わる?という感じで(笑い)。ぼくらが始めたころはガラガラやったんで。ほんま、前2列とかしかいなかったような感じです。それが今はパンパンで、チケットが取れないとかなったりするんで」
南條「ちょっとイジるくらいのワードがピタッとした感じだったんですが、今は胸張って、普段大宮でやってるんです、と言えるようになったというか」
―本当に苦労の連続で今の場所にいられるとは思うのですが、今後はどのような将来像をお持ちなのでしょうか?
三島「とりあえずは、細く長くいけたらとは思ってます。劇場にも立ち続けて、一応ライブも定期的にはやっているので、こういう芸人さんがいるんだな、という認識は持ってもらえるようにはしたいですね。それと、かねがね、ぼくはNGKの楽屋フロアーにあるソファに座ってる師匠のみなさんが楽しそうで、めっちゃうらやましいんです。ずっと一緒にやってきた仲間とか、新喜劇のみなさんとか、競馬の話をしたり、他愛もない話をして笑ってる雰囲気がええなあと感じるんで、早くそうなりたいなとは思います(笑い)」
南條「じじいになってもこの形はいけるというか、おもしろさでいうと、おじいさんとかになると、むしろおもしろさが増す可能性も秘めてる形やと思うので、板についてきたときにどうなるか楽しみですね」
―正月とか引っ張りだこになるかも、とは思いますが(笑い)。
三島「そうなったら最高ですけどねえ」=終わり
【取材を終えて】芸人にとって何よりも重要なのはオリジナリティー。すゑひろがりずは苦労に苦労を重ねて、その圧倒的な武器を手に入れることができた。
三島は着物を「鎧」と表現し、南條は「キャラクターを消すアイテム」というような表現を使った。王道からは大きく外れるネタのスタイルに若干の負い目を感じる時期もあったことがうかがえる。ただ、大宮を主戦場にしながら大阪以上に競争が激しい東京での実績は、外野の声を黙らせるには十分だ。
難波の着物の古着屋へ走ったときに「一生これでいく」と覚悟を決めた2人。当時夢見ていた「細くても長い芸人人生」をいま、ゆっくり歩んでいる。(江良 真)
【公演情報】大宮セブンライブ10thooo~10周年の家族旅行in大阪~ 11月3日、大阪・なんばグランド花月(NGK)。出演は大宮セブン(マヂカルラブリー、囲碁将棋、GAG、すゑひろがりず、タモンズ、ジェラードン)。FANYチケットなどで発売中。
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