今平周吾「頭が真っ白になった」 18番で20メートルのパットを沈めてメジャー初優勝 日本オープン

＜日本オープン・最終日＞優勝し手荒い祝福を受ける今平周吾撮影・西尾大助

　◇男子ゴルフツアー　日本オープン最終日（2024年10月13日　埼玉県　東京GC＝7251ヤード、パー70）

　首位と1打差の3位から出た今平周吾（32＝ロピア）が5バーディー、3ボギーの68で回り通算4アンダーで逆転し、地元の埼玉でメジャー初優勝を飾った。昨年11月の三井住友VISA太平洋マスターズ以来のツアー通算10勝目。

　1打リードで迎えた18番、第2打地点にいた今平の耳に大歓声が届いた。振り返ると17番グリーンで最終組の木下が手を突き上げているのが見えた。

　「木下さんがバーディーを取ったのが分かった。ボギーを打ったら優勝できないと思った」。残り230ヤードから3Uでグリーンを捉えると、20メートルのスネークラインをねじ込んだ。奇跡のバーディーで再び単独首位に浮上。優勝を確信したように雄叫びを上げ、ガッツポーズをつくり、ボールを観客席に投げ込んだ。

　「パーを取ってプレーオフに行ければと思った。まさか入るとは思っていなかった。頭が真っ白になった」。

　木下が18番をパーで終えると、柏木一了キャディーと握手。中島啓太らツアー仲間から祝福を受けた。

　1打差でティーオフ。「アンダーパーで回るのが目標だった。回りは気にせず上がりの3ホールでボードを見るくらいの気持ちだった」。3番でボギーが先行したが、4番パー3で1メートルにつけて取り返し、5番で連続バーディー。8番で3メートルのスライスラインを読み切り単独首位に。ティーショットを左ラフに入れた11番でスコアを落とし、終盤は木下とデッドヒートを演じた。先行された後、14番で8メートルのパットを沈めて追いついた。16番で1・5メートルのパーパットを外し天を仰いだが、最後にライバルを突き放した。

　コースからほど近い入間市内に実家がある。知人も応援に駆けつけた中で劇的勝利。埼玉県出身者で初めて日本オープンを制した。「日本オープンは優勝したい大会で、今まで成績も良くなかったので、優勝できてうれしい」と笑顔を見せた。

　今季、飛距離を求めてトレーニングで体を大きくしたが、動きが悪くなりスイングに切れがなくなった。夏には3戦連続予選落ちの屈辱を味わい「自分のサイズの中でポテンシャルを出そう」と考えを改めた。

　筋肉を大きくするのではなく、動きを良くするトレーニングを取り入れ、胃腸に負担を掛けないよう夕食は午後7時までに済ませるように生活を改善。脂ものも控えるように心掛けた。すぐに効果が表れ、9月以降は4試合中3試合でトップ10に入った。

　今季はパットにも苦しんでいたが、3試合前から左肘を曲げるようにフォームを修正したところ「タッチも方向も合うようになった」。全てのピースが埋まるように調子を上げて今大会を迎えた。

　長年コンビを組む柏木一了キャディーによると「アプローチなんか年に2回くらいしか練習しないのに感性で寄せる。天才肌」。プロならスタート1時間半～2時間前に会場入りするが、今平はわずか50分前に到着し短時間の調整でスタートホールに向かう。ホールアウト後も、柏木キャディーが「アテスト終わって3分で帰る」と表現するほど足早にコースを後にする。

　今平は「練習をやればやるほどいろんな考えが入ってくる。ストレスをためなくない」とその理由を説明するが、今週は1時間以上前にコースに入るなど入念に準備していた。

　4日間でアンダーパーは2人だけ。ツアー屈指の難コースを攻略できた要因を「距離が残ってもフェアウエーキープを大事にした」と明かした。開幕前には柏木キャディーと「このコースは刻み倒して行こう」と約束。キャディーが止めてもリスクを負ってピンを狙い「ゴルファーの性だから」とうそぶく男が今週は堅実なスタイルを貫いた。最終日、1Wを握ったのは13番だけ。4日間を通じても6回しかなかった。

　史上34人目のツアー通算10勝。17年のツアー初優勝から7季連続優勝は歴代4位の記録となる。

　優勝賞金4200万円を獲得し、賞金ランクは13位から4位に浮上。今大会後の上位8人に付与される米ツアーZOZOチャンピオンシップ（24日開幕、千葉・アコーディア習志野CC）の出場権を手にした。

　「米ツアーでやるにが最大の目標」と言う今平にとって特別な試合だ。「（ZOZOチャンピオンシップに）出るために今週は頑張りたいと思っていた。この調子を持って行けたら」と意気込みを口にした。