西田敏行さん急死 輝き続けたマルチな才能 コミカル役から凄みのある悪役まで 舞台でも存在感
スポニチアネックス / 2024年10月18日 4時3分
俳優、歌手、司会者――西田敏行さんはマルチに活躍した。
俳優としての原点は、5歳で実母の姉の養子になったことだった。養父母は優しかったが、甘えた方がいいのか、反抗した方がいいのか、子供ながらに“演技”をしていた。少年時代は父親に連れられ映画館に通い、東映の時代劇を見まくった。「自分も銀幕に映りたい」。演技の道に進むのが夢となった。
本格的に俳優を目指し、高校入学と同時に福島県郡山市から上京。ホームシックになり、中学校の修学旅行で訪れた上野動物園のゴリラの獣舎の前で何時間も過ごした。この時期について後に「役者になるのに貴重な時間だった。自分と向き合う時間が持てたから」と話している。
国民的な“愛されキャラ”となったのは、その体形を生かして猪八戒を演じた1978年の日本テレビ「西遊記」。初主演となった80年の同局「池中玄太80キロ」では“人情家”というイメージが固まった。タイトルは、当時体重が80キロだったことから決まった。
マルチな才能は同作で開花した。81年の「パート2」のテーマ曲として歌った「もしもピアノが弾けたなら」が大ヒット。紅白には歌手として4度出演。白組応援リーダー、審査員、白組司会と“4冠”を達成しているのは西田さんだけだ。
体形のように“太っ腹”でもあった。同曲の大ヒットで得た収入で、当時所属していた劇団青年座を海外旅行に招待。後輩の女優・高畑淳子(70)は後に「劇団員はタダで恋人は半額。総勢500人ぐらいだった」と明かしている。
どんな役を演じても、人懐っこく、憎めなかった。映画「アパートの鍵貸します」などに主演した米喜劇俳優ジャック・レモンさんに影響を受けたと公言。自らを「コメディー系アクター」と評した。役者人生の大きな転機は03年、55歳の時に心筋梗塞で倒れたときという。自分自身を俯瞰(ふかん)的に捉えられるようになり、演じることがより楽しくなったという。
「アウトレイジ」では“悪い顔”も見せ、晩年まで役柄の幅を広げ続けた。「田中角栄を演じてみたい」と熱望。天国でも新しい役に挑戦していくだろう。
≪舞台でも存在感 通算261回主演「屋根の上のヴァイオリン弾き」≫西田さんは舞台でも存在感を発揮した。故森繁久弥さんの代表作であるミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」の後を継ぎ、1994年から2001年まで通算261回主演を務めた。西田さんにとっては初めての商業演劇出演となったが、TBSドラマ「三男三女婿一匹」などで共演し、師と仰いでいた森繁さんから「今度はお前だ」と言葉をかけられ快諾。7年にわたり大役を務めた。ほかには「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」や「欲望という名の電車」などに出演した。
≪原発事故直後から訴え≫西田さんは東日本大震災による福島第1原子力発電所の事故で、風評被害に苦しむ地元福島県の支援にも心を砕いた。事故直後の2011年4月には県内のスーパーを訪問。「福島を汚したのは誰だ!何だ!本当に腹が立ちます」と声を荒らげて、全国に福島の苦境を訴えた。そして「美しい福島をもう一度、俺たちの手で取り戻そうじゃないですか!」と住人に団結を呼びかけた。その後も原発事故で集団避難をした双葉町の住人に炊き出しを行うなど、活動を続けた。
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