沢村賞5年ぶり該当者なし…巨人・戸郷、ソフトバンク・有原が最終候補も一本化できず

会見する堀内委員長（撮影・白鳥　佳樹）

　プロ野球草創期の名投手、故沢村栄治氏を記念し、シーズンで最も活躍した先発投手を表彰する「沢村賞」の選考委員会が28日、都内で開かれ、19年以来、5年ぶり6度目の該当者なしと決まった。

　選考基準は15勝、150奪三振、10完投など7項目。5人の選考委員による議論では4項目をクリアした巨人・戸郷、3項目をクリアしたソフトバンク・有原が最終候補に残ったが、意見がまとまらなかった。セ、パそれぞれで最多勝に輝いた巨人・菅野、日本ハム・伊藤らの名前も挙がるなど議論が長引き、堀内恒夫委員長は「非常に難しい選考。多くの選手の名前が出たが、“帯に短したすきに長し”で一本化ができなかった」と話した。

　昨年まではオリックス・山本（現ドジャース）が圧倒的な成績で3年連続受賞も沢村氏の名前を冠する格式と威厳を示すようなハイレベルの数字を残した投手がおらず、苦渋の決断に。平松政次委員は「20年以上委員をやっているが、これぐらい“難産”したのは記憶にない。そのくらい傑出した投手が出なかった」と振り返った。（伊藤　幸男）

　≪堀内委員長が基準見直し示唆≫投手の分業制が進み、10完投や200投球回をクリアするのは難しい。この日は議論されなかったが、堀内委員長は「格式を持った規定を維持しつつ、変えられるものは変えていかないといけない」と完投数や投球回など将来的な基準の見直しの可能性も示唆。同委員長は前回の該当者なしだった19年の会見では「沢村さんのお名前に傷をつけてしまう」と基準を下げることに否定的だった。

　▽沢村賞　プロ野球史上初の無安打無得点試合を達成した伝説の大投手、沢村栄治（巨人）を記念して1リーグ時代の1947年に制定。シーズンで最も優れた先発完投型の投手に贈られる賞で、2リーグ分立の50年からはセ・リーグの所属投手だけが選考対象となり、89年から両リーグに拡大。選考基準は（1）15勝以上（2）150奪三振以上（3）10以上の完投試合数（4）防御率2・50以下（5）200投球回以上（6）登板25試合以上（7）6割以上の勝率、の7項目。