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【内田雅也の追球】「人一倍」と「1・01の法則」

スポニチアネックス / 2024年11月1日 8時3分

高知龍馬空港に到着した阪神ナイン(撮影・大森 寛明)

 よく「人一倍がんばる」という。一倍は「×1」なので人と同じではないのか。

 『日本国語大辞典』には「一倍」は「二倍の古い言い方で、ある数量にそれと同じだけのものを加えること」とある。奈良時代から2倍の意味で使われていたそうだ。

 辞書編集者の神永曉は『悩ましい国語辞典』(時事通信社)で<正確な数量を表すのではなく、ほかと比べて程度が大きいという、「いっそう」「ずっと」の意味になった>と記している。そして<人の2倍もがんばる必要はなく、人よりもちょっとだけがんばれば、1・1倍でもいいのだと思う>と解釈している。

 さらに、がんばりや努力をもっとやさしく諭しているのが「1・01の法則」である。ずいぶん前に当欄で書いた。ある小学校の校長室に貼られていた言葉だと『月刊朝礼』で紹介されていた。

 人と比べるのではなく、今日は昨日の自分より1%だけ余計に努力する。そうすると1年後には37・8倍にもなる。1・01の365乗である。

 日々の積み重ねが、いかに大きな成果を生むことか。継続は力である。

 阪神はきょう1日から高知・安芸で秋季キャンプに入る。就任会見で「まっすぐ愚直に真心を込めて」と語った新監督・藤川球児が選手たちに望むのも、こうした、ひたむきな努力だろう。

 甲子園での秋季練習中、1、2軍首脳陣で最年長の2軍監督・平田勝男がコーチ陣に問いかけた。「ショートダッシュで選手たちは最後の一歩まで走りきっているだろうか」。最後まで手を抜かない姿勢を再確認しようというわけだ。「小さなことかもしれん。それでも毎日のことだ。一歩一歩が行く先には大きな一歩になってくる」

 同じことを巨人コーチ・川相昌弘が著書『ベースボールインテリジェンス』(カンゼン)に書いている。プロ入り時の2軍監督・国松彰がショートダッシュで「ゴールラインがフィニッシュじゃない。一歩先まで走ることを習慣づけておきなさい。その積み重ねがほかの選手と大きな差になるから」と諭した。

 1軍で活躍するようになり、国松から「継続してやっていたのはおまえだけだった」と聞き<これほど嬉しい評価はない>と記している。

 遠くスターへの道を描き、小さな一歩を刻んでいきたい。 =敬称略= (編集委員)

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