【内田雅也の追球】「勢いある姿」の光景
スポニチアネックス / 2024年11月9日 8時2分
全体練習開始前、左翼芝生の上で練習スケジュールの説明があった。野手のベースランニングで二盗のタイム計測を行うと告げていた。
「記録会じゃないからね」と走塁チーフの肩書があるコーチ・筒井壮が話すのが聞こえた。「何も無理する必要はない。今の自分の体の状態に応じて走ればいいから」
高知・安芸での阪神秋季キャンプも中盤。選手たちには疲労もたまっている。競争心が高じ故障につながるのを案じてかブレーキをかけていた。
それでも若い選手にはアピールの場だ。特に俊足が売り物の選手には目立つチャンスである。
ポケットからストップウオッチを出し、手もとで計測しながら眺めていた。一塁からリードをとり、打撃投手がシャドーで投球してスタートし、二塁に滑り込んでいく。3秒86、3秒72、3秒56……と進んでいた。
何人目かの選手が二塁に頭から突っ込んだ。ヘッドスライディングだ。スタンドからわーっと歓声があがった。
手もとを見ると「3秒26」。速い。立ち上がり、背中を見ると「126」。育成選手の福島圭音だった。俊足で今春2月のキャンプでも一時、1軍に呼ばれ、練習試合にも出ていた。1人2回走り最高タイムだった。ヘッドは福島だけだった。
必死なのだろう。ヘッドは故障につながる危険があるとか、タイムが落ちる懸念があるとか、そんなリスクよりも、必死さが勝っていた。
いや、この福島の二盗ヘッドは必死さが表に出た、一つの側面でしかない。ここにいる選手たちは皆、必死なのだ。
それぞれ立場は異なり、それぞれ課題やテーマがあるが、必死なのは変わりない。それは監督・藤川球児も感じている。
監督就任後のミーティングで選手たちに「姿勢」という言葉を訴えた。「姿勢とは勢いのある姿と書く」とし、そんな姿勢を見せてほしいと説いた。キャンプでのテーマは「没頭」としていた。
必死や没頭、そして努力が必ず報われるかと言えばノーだろう。<でも努力しなければ、夢はぜったいに手に入りません>と、作家あさのあつこが『10歳の質問箱』(小学館)で答えている。<ムダになったと思っていた努力が、思わぬところで花をつけ、実を結ぶことがたくさんある>。
必死に没頭したからこそ見える光景、感じる境地があると心に留め置きたい。 =敬称略= (編集委員)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
阪神の若き俊足コンビ・福島&高寺 ベース吹っ飛ばせトレ“強速”スライディング習得へ「低く強く」
スポニチアネックス / 2024年11月2日 5時17分
-
走者一塁なのに“得点圏” 現ドラ組や育成ドラ5…鷹・周東抑えて1位はロッテのドラ1
Full-Count / 2024年11月1日 15時48分
-
阪神・藤川監督 秋季Cのテーマは「没頭」 姿勢が見えない選手は鳴尾浜へ強制送還も辞さず
スポニチアネックス / 2024年11月1日 5時18分
-
中高一貫の名門・星稜中が重視する「出場機会」 大所帯でも“意欲高まる”育成術
Full-Count / 2024年10月25日 11時58分
-
【阪神】藤川新監督に背水の若虎が俊足アピール V逸今季は盗塁数が半減
東スポWEB / 2024年10月19日 6時5分
ランキング
-
1大山悠輔FA宣言!虎の4番が巨人に? 阪神ファン悲痛な叫び「巨人は勘弁。残留して」
iza(イザ!) / 2024年11月13日 11時26分
-
2「それは日本に失礼だ」 侍J戦でチェコ代表監督が尽くした礼節 通訳が明かしたハチマキ姿の真意
THE ANSWER / 2024年11月13日 9時53分
-
3ドジャースは「日本の広告で大金得た」と米指摘 154億円のスタジアム改修は「大谷のおかげだ」
THE ANSWER / 2024年11月13日 15時3分
-
4少年空手の危険行為 全日本空手道連盟が声明「空手を名乗る大会で…」 他団体による大会も「心を痛める」
スポニチアネックス / 2024年11月13日 9時48分
-
5佐々木朗希の「投げては休む」をメジャーは受け入れるのか? 大谷翔平とは正反対のメンタル
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月13日 9時26分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください