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【内田雅也の追球】阪神が秋季キャンプ中に野球教室 愛される球団にするため、勝つこと以前にやる活動

スポニチアネックス / 2024年11月11日 8時1分

<阪神秋季キャンプ> 野球教室で子どもたちと交流する豊田(左)と井上(撮影・大森 寛明)

 安芸市営球場(タイガース球場)は子どもたちの歓声に包まれた。イベント開始早々、ロングティーで佐藤輝明が大飛球を放つとわーっ、桐敷拓馬が「ストラックアウト」の的当てを外してもわーっと声があがった。

 阪神が秋季キャンプ中に企画した野球教室が行われた。「未来につなぐ トライアル・ベースボール」と銘打った少年少女向けのイベントである。地元の独立球団で監督・藤川球児も一時在籍した高知ファイティングドッグス(FD)と連係した。「打ちたいき! 投げたいき! 走りたいき!」と土佐弁で親しみやすさを表した。ただ応募は全国24道府県360組720人と広がり、抽選で選ばれた親子60組120人が参加した。

 開会のあいさつを行った高知FD社長・武政重和は「野球をやったことない子はぜひやってみてください。野球をやっている子はもっと好きになってください」と話した。藤川は「スターや本物の選手に触れてください」と語りかけた。

 藤川が監督就任会見(10月15日)で強く「見といてください。やりますから」と語ったのが野球振興、地域貢献活動だった。「今後100年に向け、愛される球団にする必要、義務がある」

 阪神球団の基本理念とも一致する。少子化以上のペースで進む野球人口減少に危機感を抱いている。来年1月1日付で機構改革を行い、野球振興室を独立させる。同室長を兼務する球団本部長・嶌村聡は「チームが目指すのはもちろん勝利、優勝。しかし勝つこと以前にやることがある。地味だが地道に、活動を広げていきたい」と話した。

 「ファン作りには時間と辛抱強さが必要」と大リーグコミッショナーのロブ・マンフレッドがウォールストリートジャーナル(WSJ)日本版で語っていた。観客の高齢化が進み、調査では「来場者の多くは少年少女時代に野球に触れたことがある者」とわかった。

 作家・五木寛之が野球観戦の楽しみに<追体験>をあげている。『風に吹かれて』(角川文庫)にある。<選手の一挙手一頭足に、自分の過去を重ねて共にプレイしていると感じることがある。ライナーを横っ飛びの捕球する野手の掌(てのひら)にピシッと来る衝撃を自分のものとしてスタンドで味わっているのである>。目指すべきは、この感覚を広げることだろう。 =敬称略=

 (編集委員)

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