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クイーン 2024年版デビューアルバム「Queen1」の強い光

スポニチアネックス / 2024年11月21日 9時31分

「Queen1」のジャケット

 【牧 元一の孤人焦点】新たな息吹を感じる。クイーンのデビューアルバム「戦慄の王女」の最新リミックス&リマスター盤を聴いた。51年も前の音なのに、作りたてのような印象を受ける。

 45年以上前からこのバンドの楽曲の数々を聴いてきたのに、恥ずかしながら、このアルバムを聴いたことがなかった。4作目の「オペラ座の夜」を最初に購入し、それから「華麗なるレース」「世界に捧ぐ」「ジャズ」「ザ・ゲーム」などを買って、このバンドを熟知した気になっていた。

 「戦慄の王女(Queen1)」日本盤2SHM-CDデラックス・エディションは今月13日に発売された。最近は音楽を通勤の際などにイヤホンで聴くことがほとんどだが、今回は久しぶりに自宅のオーディオにこのCDを入れ、マンション住まいで許される程度の大音量で聴いた。

 耳に届く音が立体的だ。フレディ・マーキュリーのボーカルはもちろん、ブライアン・メイのギター、ジョン・ディーゴンのベース、ロジャー・テイラーのドラムが左右のスピーカーから際立って聞こえる。古いCDにありがちなスカスカ感が全くない。1970年代ではなく最近新たにレコーディングしたのではないかとさえ感じさせる。

 ロジャーはこのデビューアルバムのレコーディング当時のことをこう振りかえっている。

 「あそこ(収録スタジオ)には、自分のちゃんとしたドラム・セットさえ持ち込めなかったんだ。実際、ちょっと大変だったね。だからこのアルバムは、僕らが望んでいたような音にはならなかったんだ」

 ところが、その音が今回の最新リミックス&リマスターによって飛躍的に改善された。ブライアンはこう明かしている。

 「これは、クイーンのデビュー・アルバム全体を再構築した、全く新しい2024年版だ。そして後知恵の御利益として、今回これを『Queen1』と改名することにした。演奏と歌は全て1973年の発表当初と全く同じままだけれど、全楽器で、当時僕らが目指していたライブ感のあるアンビエントなサウンドを再現するため、再検討を行った。その結果、本来そうあるべきだったサウンドを放つ『戦慄の王女』が、現代の知識と技術を駆使して誕生したわけだ」

 1曲目の「炎のロックン・ロール」はライブ盤で何回も聴いてきた曲だが、こうして改めてオリジナルを聴くと新鮮だ。ブライアンの複雑なギター・オーケストレーション、フレディの華麗なハーモニーは、クイーンがデビュー当時から既に他のロックバンドとは一線を画していたことを痛感させる。

 4曲目の「マッド・ザ・スワイン」は初めて耳にする曲だ。1973年発売のオリジナル盤には、バンドとプロデューサー陣の1人との意見の食い違いによって収録されていなかった。今回のアルバムで、3曲目の「グレイト・キング・ラット」と5曲目の「マイ・フェアリー・キング」の間に収められたのは当時のバンドの意図通りだという。この曲は面白い。フレディがサビで軽快に♪マッド・ザ・スワイン マッド・ザ・スワイン…と繰り返して歌うところは流行歌的で愉快な気分になる。

 全11曲の中には、これがクイーンの曲なのか?と思わせるものもあれば、これぞクイーンだ!と思わせるものもある。総じて言えるのは、彼らが既存のロックに安住しようとせず、高みへと駆け上がろうとする意志が楽曲からうかがえることだ。

 彼らの原点がここにある。そして、その原点は最新リミックス&リマスターによって、いま強い光を放っている。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。

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