満票MVP大谷 史上初「DH専任」の価値 投票した米ナ・リーグ記者語る
スポニチアネックス / 2024年11月23日 1時32分
3度目のMVP選出は確実視され、満票なるかが焦点だった。特に指摘されたのは、DH専任の選手のMVPが過去一度もなかった点。また新たな歴史の扉を開いた大谷の3度目の満票MVPの価値や選考基準について、実際に投票したナ・リーグの東、中、西各地区の担当記者に聞いた。(取材・大リーグ取材班)
【東地区 ニュースデー紙コラムニスト デービッド・レノン記者】大谷が守備に就いていないと指摘する意見は理解できる。デービッド・オルティス(レッドソックス)やエドガー・マルティネス(マリナーズ)らが受賞しなかった理由であったことも明らかだ。
しかし、大谷は史上初めて「50―50」を達成した。それだけで、MVPにふさわしい。前人未到の数字を乗り越え、その後に54本塁打、59盗塁にまで数字を伸ばした。本塁打、打点、盗塁、OPS(出塁率+長打率)もリーグトップだ。守備でのチームへの貢献度は全くないという決して小さくはないマイナスを、補って余りあるオフェンス面でのプラスがあった。
確かにリンドアは、メッツの快進撃を支えた主役だ。走攻守において高い指標もマークし、チーム全体を引っ張った彼のリーダーシップは素晴らしい。彼が大谷の満票受賞に対する最大のライバルとなるのはよく理解できる。それでも、大谷が残した成績は歴史的だ。ジャッジと大谷は、ただ打つだけではなかった。彼らはともにトータルでチームの地区優勝に最も貢献し、MVPにふさわしいと誰もが感じると思う。
【中地区 大リーグ公式サイトカブス担当 ジョーダン・バスティアン記者】8月までMVP争いは大谷とリンドアの間で繰り広げられていた。両選手はデータサイト「ファングラフス」が算出するWAR(標準的な成績の選手と比較して、どれだけ勝利数を上積みしたかを表す指標)が6.6で並び、リンドアは守備の素晴らしさも加えて、議論の余地があった。
ただ、9月に大谷は抜け出した。9月はMLBトップのWAR2.4を記録し、月間打率.393、10本塁打、32打点、42安打、27得点、16盗塁を記録した。また、史上初めて「50―50」シーズンを達成した選手にもなった。「40―40」でさえ過去5人しかおらず、多くが想像することすら難しかった数字を、現実のものとしたインパクトは大きかった。
一方、リンドアはケガのため9月は16試合の出場に制限されてしまい、シーズンのWARは7.8。それに対して大谷はリーグトップの9.1と差を大きく広げていた。大谷はシーズン終盤に圧倒的な成績を残し、その過程で「50―50」で歴史をつくった。シーズンが終了した時点で、もはや議論の余地はなく、大谷が明らかな選択肢だと思った。
【西地区 ジ・アスレチックドジャース担当 ファビアン・アルダヤ記者】他の選手が攻守両面で見せるものを、打撃力だけで超越した。昨年受けた右肘手術のリハビリ中のため、打者しかできなかったという事実を度外視させる歴史的活躍だった。
特に前人未到の「50―50」を一気に達成した9月19日のマーリンズ戦は、絶大なインパクトがあった。6打数6安打、2二塁打、3本塁打、10打点、4得点、2盗塁。あれ以上のものはない。ドジャースの選手の誰もが、今年最も印象的な試合だったと言っている。私自身も野球場であれ以上の驚きを感じたことはない。
翔平はたとえ試合がうまく運んでいないような時でも、彼の力で試合を動かすことができるスーパースターだ。彼はいつでも我々の想定を上回る。来季は投手としてどのような復帰を果たし、どのようなボールを投げるのか、今から楽しみだ。
また、グラウンド外では野球選手としての成熟も見られた。プレーだけでなく、メディア対応を含めて看板選手としての責任も果たすようになった。移籍1年目ながら、エンゼルス時代と比較しても大きな変化があったと思う。
▼ピッツバーグ・ベースボール・ナウジョン・ペロット記者(パイレーツ担当)迷う余地は全くなく、とても簡単な選択だった。大谷はナ・リーグで間違いなく最も価値のある選手。どのデータでも、リンドアもマルテも大谷に近い存在ではなかった。守備をしていないことも全く関係なかった。とりわけ「50―50」という新たな歴史をつくったことが素晴らしかった。
▼ジ・アスレチックトレント・ローズクランス記者(レッズ担当)大谷は野球界で最高のプレーヤー。これまで何度も投票をしてきたが全く迷わなかったし、簡単な選択だった。1位票を決めるより、2位から10位を誰にするかで時間がかかった。大谷は今年の他の野手とは全く比較にならず、歴史上、オフェンス面で最も偉大なシーズンの一つを達成した。
≪最強オルティスも届かなかった栄冠≫歴代最多8度のエドガー・マルティネス賞(最優秀DH)を誇り歴代最高のDHと名高いオルティスも、MVP投票では2位が最高だった。05年は打率.300、47本塁打、148打点も1位票は11票で、打率.321、48本塁打、130打点のヤンキースの三塁手ロドリゲスが同16票を集め、24ポイント差で敗れた。54本塁打、137打点で打撃2冠だった翌06年も6位。「私はDHだからMVPは与えられない」とぼやいた。最優秀DH5度のマルティネスもMVP投票は95年の3位が最高だった。
≪通算464本塁打クルーズ氏「何の疑いもない」≫マリナーズなどでエドガー・マルティネス賞2度、通算464本塁打のネルソン・クルーズ氏(44、現大リーグ機構特別アドバイザー)は、DH専任初のMVPを「守備に就かなくても、大谷がやり遂げた“50―50”は歴史的であり、成績は圧倒的。何の疑いもなくMVPだ」と絶賛した。23年WBCに続き26年大会でもドミニカ共和国代表のGMも務める同氏は「次のWBCで大谷と対戦できるチャンスが楽しみ」と語った。
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