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【内田雅也の追球】「感謝」は力になる。

スポニチアネックス / 2024年11月24日 8時0分

ファン感謝デーのオープニングで、あいさつする阪神・藤川監督(撮影・須田 麻祐子)

 当たり前だが、ファン感謝デーはファンへの感謝を示す日である。甲子園球場では阪神監督・藤川球児が冒頭に「まずは岡田監督になりかわりまして、今シーズンの応援にお礼申し上げます」と話した。寒空の下、スタンドにはほぼ満員の観衆が詰めかけていた。

 記者席で藤川のあいさつを聞いた後、1階に下りて関係者食堂「サロン蔦」に入った。大竹耕太郎、木浪聖也がいた。待機しているようだった。

 きつねうどんを食べていると、2人は隣のプレミアムラウンジに出向き、年間予約席のファンにサインを手渡している。お辞儀をして、あいさつしていた。「皆さんの応援が力になりました」

 ファンの応援が力になる、というのは選手たちの本音である。特に甲子園球場の大歓声には勇気づけられる。

 もう一つ、選手たちはファンに感謝することも力になることを知っている。特に何か学んだわけではなくても、本能的に感謝する気持ちが自分たちの力になることをわかっているのだろう。

 哲学者、評論家の渡部昇一が<感謝したいという欲求は食欲・性欲・集団欲に近いレベルである>と著書『「人間らしさ」の構造』(講談社学術文庫)に記している。人は「ありがとう」と思いたいわけだ。

 渡部はまた『一日一言~知を磨き、運命を高める』(致知出版社)でこうも書いている。<何かうまくいったら、自分の力だと思いたいところをそう思わない。反対に、まずいことが起こったら、人のせいとか運のせいにしないで、どうすればそれを避けえたかと考えるのが幸運に至る王道である。そういう発想のできる人が器量の大きい人なのだ>。

 阪神OBの下柳剛が<「自分の力でうまくいった」と慢心が起こると必ず頭打ちになる>と著書『ボディ・ブレイン』(水王舎)に書いている。

 登板後は周囲の人びとに感謝するように心がけた。<想像してみてほしい。「自分は周囲の人に助けられている。一人じゃない」――きっと気持ちが少し楽になったはずだ>。やはり感謝は力になるのである。

 勤労感謝の日だった。勤労を尊び、生産を祝い、国民がお互いに感謝し合うことを目的だという。もとは宮中行事の新嘗祭(にいなめさい)で収穫に感謝する日である。感謝について考える日だった。 =敬称略= (編集委員)

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