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「損得勘定抜きで作品育てていこうと」安田淳一監督&沙倉ゆうの「侍タイムスリッパー」旋風振り返る

スポニチアネックス / 2024年11月26日 16時1分

インタビューに応じた安田淳一監督(左)と沙倉ゆうの

 話題の自主制作映画「侍タイムスリッパー」の快進撃はまだ止まらない。今年8月に池袋・シネマ・ロサの1館のみで始まった上映が、今月には300館を超え、そのタイトルは今年を代表する言葉を選ぶ「現代用語の基礎知識選 2024ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネート。きょう26日に発表された、その年度で最も優れた新人監督を選ぶ「第29回新藤兼人賞」では安田淳一監督が銀賞を受賞した。このほど、安田監督と本作でヒロインの助監督・優子を演じた沙倉ゆうのが本紙のインタビューに応じ、「侍タイ旋風」を振り返った。

 「こんなんがずっと続くわけではないけど、この瞬間を記憶にとどめるように大事に過ごしていきたい」と、かみしめるように話した安田監督。映画の躍進には、周囲の後押しが欠かせなかったと振り返る。「昨日(11日)も、フランス座で水道橋博士がファンイベントをしてくれたんです。チケットを販売したら200席がすぐ満席になって、お客さんに“何回見ました?”って聞いたら10回くらいはごろごろいて。最高57回ですよ。1日3回見ると。絶対俺より見てる」と苦笑い。「作品に温かい雰囲気があるから、あの雰囲気が好きな人は皆温かい」と熱心なファンに感謝した。

 一方の沙倉はまだ実感が湧いていない様子だ。「実際、舞台あいさつに行っているのは東京と大阪の限られた場所だけ。全国の方に楽しんでもらえてるという実感がなくて」。それでも映画を通してうれしい出来事もあった。「父が5歳の頃に亡くなっているんです。その父の大学の同級生が静岡にいるんですけど、そこで映画をみて“感動した”って言って関西まで会いに来てくれたんです。年賀状のやりとりは毎年していたんですけど、会ったのは40年ぶりでした」と笑顔で振り返る。作品が再会の橋渡しとなった。

 安田監督が「小さな奇跡みたいなものが積み重なったんです」と話すように、作品は各方面から大きなバックアップを受けた。脚本を評価した東映京都撮影所が撮影時に特別協力したことは有名な話だが、「大手映画会社の心意気がすごかった」と明かす。「ぱっと出てきた作品をみんなで育てていこうと、損得勘定を抜いているところがあった。500席のもっとお客さんが入るような映画を退けて、初回から自主製作映画を5回上映するとか、ちょっと頭おかしいですわ」とまたまた苦笑い。「本来だったら数百万円払わないと出せないような広告を、僕が知らないうちに勝手に出してくれていた。みんなが心意気を持ちながら作品を育ててくれているのがすごくうれしい。一緒に危ない橋を渡ってくれるような感じでした」と業界全体がヒットを後押ししたことに感謝した。

 先月14日に行った舞台あいさつでは「トム・クルーズさんにリブート(再映画化)で撮ってほしい。ハリウッドに行きたい」とぶち上げた安田監督。本紙含め多くのメディアがその発言を取り上げたが、作品関係者は「あの舞台あいさつの後、めっちゃヘコんでいました」とこっそり教えてくれた。作品の今後については「本作をもとにしたさまざまな形のお話はいただいていますし、実現はしたいです」とさらなる展開も示唆した安田監督。さらなる躍進の期待が高まるばかりだ。

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