Char「人に聴かせたい、見てもらいたい」小さな頃から変わらぬ原動力 ギターを手放すことは絶対に無理

ギターを手に笑顔を見せるChar（撮影・会津　智海）

　【だから元気！】著名人に健康や元気の秘訣（ひけつ）を語ってもらう企画「だから元気！」。今回は「SMOKY」などで知られる、日本を代表するレジェンドギタリストのCharさん（69）です。今も現役でステージに立ち続けている秘訣は音楽を始めた時と変わらない気持ちがあったからでした。（構成・高原　俊太）

　69歳。語呂合わせで「ロック」までステージに立ち続けられる秘訣って言われてもないかもしれないな。仕事だからっていうのが大きいかもしれないけど、小さい頃から「人に聴かせたい、見てもらいたい」という気持ちがあるから。それがモチベーションになっているし、ステージに立ち続けることができる。だから重いものを持って立ち続けられる間は続けたいね。

　とにかく曲を作ってバンドで演奏するのが楽しいんだよね。バンドはメンバーが集まってそれぞれの仕事をするという、小さな社会みたいなもので、ケンカをすることもある。50年以上やっていて面倒くさいこともあるよ。それでもライブで一つになった時の高揚感は何事にも代えがたいし、しょっちゅう起きるわけでもない「これだ！」という化学反応みたいなものを求めてしまう。逆もあって最後までしっくりこない日もあるけどそこも面白い。

　そんな感じで続けられたのは開業医だった母親のおかげかもね。「体調を崩したら、とにかく寝ろ！」って教えがあったから、その通りやってきたらここまで大きな病気を患うことなくやってこられた。母の仕事柄、食事や洗濯を自分でしなきゃいけない環境だったのも役立っている。学校から帰ってきて、夜の診療が始まる30分の休憩時間でご飯を作り終えなきゃだったから、冷蔵庫の余り物でパパッと作る。今もご飯を作ることは好きで、ジャンル問わずにいけるよ。中学生の時はバスケットボール部に入っていたけど、ユニホームを自分で洗わなきゃ着るものがないから洗濯も身についたね。

　そんな自立のようなものがつながってるのか分からないけど、気付いた時からずっと体重は63～65キロでキープしてる。ギターを持って立ち続けられる適正体重みたいなもんになっているけど、今は60キロ切っちゃってる。こんなに減ったのはおそらく高校時代以来だし、コロナ下でライブがなくなったことのストレスなのかな。それでも医者の先生からは「タンパク質が足りてないけど、それ以外はムカつくぐらいに健康」って言われたよ（笑い）。毎日のように酒飲んでるし、タバコも吸っているけど、これは親に感謝だね。

　音楽の入り口も母親。小学校1年生の時の担任が音楽を専攻されていて、面談で「竹中君には何か芸術的なことを習わせた方がいい」と進言があったんだよ。それを真に受けて「ピアノを習いなさい！」と言い出して、クレーンで家にピアノを運んだんだよ。当時のピアノは女の子の習い事だったから「なんで俺が…」という気持ちにはなったけど、今となってはその誤解のおかげで音楽の基礎が形成されたと思ってる。

　嫌々でピアノを習っているそばで、5歳上の兄は洋楽やギターに没頭していた。それが凄くうらやましかったし、その影響で大人になったら米国や英国に行きたいなと思うようになった。本当にいろんな巡り合わせでここまでやってこられたんだよね。

　「ここまで続けてこられたのは仕事だから」みたいなことを言ったけど、死ぬまで続けていきたい。今この瞬間、ギターやピアノに触れているからこそ生み出せる新しいフレーズがあるし、いろんな時代で奏でてきたからこそ出せる音を発見したい。それができるのがギターの面白いところで、俺がギターを手放すことは絶対に無理だね。

　≪2月ジェフ・ベックさんトリビュートライブ≫

　来年2月11日、東京・有明アリーナで開かれる昨年1月に78歳で亡くなった世界的ギタリストのジェフ・ベックさんのトリビュートライブに出演する。米グラミー賞を8回獲得したギターヒーローについて「ギターを始めた時に影響を受けたギタリストはたくさんいるけど、この30年ぐらいで影響を受けたのは彼しかいない」と尊敬のまなざしをむける。ジェフさんの自宅でセッションした貴重な経験もあり「彼のパーソナルな部分を知っているつもりなので、自分なりの彼の解釈を奏でたい」と意気込んでいる。

　布袋寅泰（62）、B’zの松本孝弘（63）も出演し、大物3人の共演が大きな話題だ。日本のギターヒーローが集うが「自分のことで精いっぱいです」と笑い飛ばす。それでも「とにかく彼（ジェフ・ベック）にふさわしい良い演奏ができるように心がけます」と語った。

　◇Char（チャー）本名竹中尚人（たけなか・ひさと）。1955年（昭30）6月16日生まれ、東京都品川区出身の69歳。73年に金子マリ（69）らとともにロックバンド「スモーキー・メディスン」を結成、1年で解散。76年に「NAVY　BLUE」でソロデビュー。音楽活動以外にも78年にTBS時代劇「雲を翔びこせ（渋沢栄一伝）」で俳優デビューを飾った。日本のレジェンドギタリストとして長きにわたり活躍。息子はロックバンド「RIZE」のボーカルJESSE（44）。