「光る君へ」“初”合戦シーンで驚きの大河コラボ 「刀伊の入寇」で「鎌倉殿の13人」で使用した舟を流用

大河ドラマ「光る君へ」46話。「刀伊の入寇」の賊（C）NHK

　NHK大河ドラマ「光る君へ」（日曜後8:00）は1日、第46話「刀伊の入寇」話が放送され、まひろ（吉高由里子）は大宰府を巡った。当時の大宰府は外交の窓口。藤原隆家（竜星涼）が権帥（ごんのそち）を務めている。雅な宮中から一転、壮大で国際色豊かな世界観が広がった。さらに、海賊による九州への侵攻「刀伊の入寇」が描かれた。番組美術の山内浩幹チーフデザイナーと枝茂川泰生デザイナーがセットのこだわりを語った。

　＜※以下、ネタバレ有＞

　「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛～僕を忘れる君と」などを生んだ“ラブストーリーの名手”大石氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ63作目。千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となる。

【1】政庁

　太宰府市内にある跡地などを現地取材。スタジオでは描き切れないスケール感で表現するため、「えさし藤原の郷」でロケを行った。既存の朱塗建築や長い回廊を最大限に利用した。枝茂川氏は「西の都のスケール感を出していきたいと思いました」と語った。

■テーマカラー「赤」

　藤壺のテーマカラーは紫だったが、大宰府は赤がテーマカラー。朱塗建築はもちろん、御簾や御簾の房も赤になっている。枝茂川氏は「大宰府は中国との外交の窓口だったので、中国様式の建築の特徴である赤を使っている。また、赤は大宰府の象徴である梅を連想させる」と語った。

■ソテツ

　今作で初めてソテツを配置。枝茂川氏は「今までは松や竹だったが、中国要素と京との違いを出すためにソテツを飾りました」と説明した。

■客館（ロビー）

　受付前の宗人たちが待機するスペース。テーブルと椅子の土間スタイルになっている。枝茂川氏は「唐の時代を感じられるような特徴的なテーブルと椅子を配置しました」と語った。唐の時代の代表的な陶器「唐三彩」や青磁の花器を飾っている。また、待ち時間を潰すための双六や碁盤を置いた。

■軍事訓練

　広場では軍事訓練が行われている。この広場でまひろは双寿丸（伊藤健太郎）と再会する。武器として弓と矛が用いられている。枝茂川氏は「武を連想させるものは大宰府ならでは。白村江の戦いの教訓を生かして武器を持っていたと考えられるため、京に比べて武を連想させるものをふんだんに取り入れています」と明かした。

【2】権帥の執務室

　権帥を務める隆家の執務室。朱塗り丸柱、瓦屋根、土間などの中国様式で、敷物・椅子・テーブルの室礼。ソテツと岩を配置した。太宰府の象徴である「梅」と隆家の象徴である「竜」がモチーフになっている。

■梅

　梅は福岡県の県花。どの部屋からも見える位置に梅の木を置いた。赤と白のひもを枝に結ぶことで花に見立てている。計600本のひもを時間を掛けて結んだという。枝茂川氏は「ひもを花に見立てたのは大宰府の人たちの遊び心。梅の花が咲かない季節でも梅の造花を飾って愛でて楽しんでいるという表現をしました」とアピールした。花瓶の敷物など随所に梅の絵柄を散りばめている。また、福岡県の県木であるツツジの花もセットにあしらっている。

■竜

　執務室にある唐三彩などの調度品は竜をモチーフにしている。竜は中国の皇帝のシンボルで、強い生き物を象徴する四神の1つ。枝茂川氏は「荒々しくて豪気な隆家をイメージしました」と明かした。山内氏は「もしかしたら竜星涼さんだから竜を飾っているということもあるかもしれない」と笑った。

【3】刀伊の入寇

　1019年（寛仁3年）に起こった外国の海賊による九州地方の侵攻。権帥だった隆家が九州の豪族や武者を率いて撃退した。今作で合戦シーンが描かれるのは初めて。「最後の最後で大きな海の戦いが登場する。チーフ演出の中島由貴さんも気合が入っていました」（山内氏）。この戦いを描くために福岡の現地や識者を訪れ取材したという。

　武士の時代以前の戦いのため、日本側はあえて強固な防備は飾らなかった。攻撃は弓が中心で、隼人の盾を参考にした手楯で防御した。敵側の舟には「鎌倉殿の13人」（2022年）で使用したものを流用。山内氏は「銅鑼（どら）を飾り、赤い色を塗って、日本とは違う民族であることを表現した。NHKが持っている既存の舟を有効に使って、海の戦いを描きました」と明かした。

　また、隆家は弓の名手。刀伊の入寇で馬上から鏑矢を放つ。山内氏は「隆家はあくまでも平安貴族なので戦時中でも烏帽子を被っている」と語った。