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【阪神 火の玉ルーキーズ】ドラ1・伊原陵人(3)中学時代に始めた柔道で体の土台と心が成長できた

スポニチアネックス / 2024年12月1日 5時17分

19日、当時監督だった八木中学校・河内校長(左)と握手をかわした伊原

 当然、家族を含む周囲の誰もが中学進学後も白球を追うと思っていた。しかし入学後、陵人が選択したのは柔らの道だった。「友達と遊ぶ時間がほしくて…」。友達と遊ぶ時間を優先するため野球を辞め、親友に誘われるまま新たなスポーツを始めた。それは未経験の柔道だった。

 軽い気持ちで足を踏み入れた世界では想像以上の厳しさを味わった。人形のように投げ飛ばされる日々が続いた。すぐに実力差を痛感。ただ、初心者ながらも悔しさだけは人一倍にあった。「こいつ!次は絶対に倒したる」。柔らの道に進んだことで、眠っていた闘争本能が覚醒。強い向上心と負けたくない一心で練習に打ち込んだ。努力を覚えたことが、将来につながるとは当時は誰も想像していなかった。

 地道な努力のかいもあって技術は向上。柔道の楽しさも感じていた一方、野球への未練もあった。練習後は常にグラウンドの横を通って帰宅。「野球部はしんどそうやな。でも…」。白球を追う同級生たちの姿を見る度に、自然と野球への愛が大きくなっていった。そして中学2年への進級を前にした2月。「やっぱり、もう一回野球をやりたい」。野球愛が勝った瞬間だった。紆余(うよ)曲折を経て再び野球の道に戻ることを決断。即、行動に移して頭を丸めた。髪形が一変。翌日、クラス内では「伊原に何があった?」と“騒動”になるほどだった。陵人は恥ずかしさを覚えながらも、丸刈りにすることで誠意を示した。

 「監督に“野球部に入れてください”とお願いしたんですが…」

 軟式野球部の河内剛監督に頭を下げた。しかし入部希望の答えは「ノー」。「柔道部の先生から、“伊原は上のレベルでやれますよ”と聞いていた。簡単には野球部に受け入れるわけにはいかんなと」。柔道の素質があることも知っていた河内監督は入部を却下。それでも陵人は決して引き下がらなかった。翌日も、また頭を下げた。その熱意に最後は河内監督が負けた。ただ一つ、ある条件を付けて入部を許可した。

 「一生、野球を辞めないと約束しろ!」

 振り返れば、この時が野球人生の中で、一つのターニングポイントとなった。再び白球を握った陵人は、まさに水を得た魚のようだった。初のフリー打撃から快音を連発。簡単に外野手の頭を越す打球を放つなど周囲を驚かせた。「柔道のおかげで、筋肉がしっかりついていたんだと思う」。他競技を始めたことは遠回りにも思えた。しかし柔道の練習が奏功。成長期の時期に下半身を強化されたことで土台が作られた。入部から1週間後には早くも試合に出場。小学時代から野球のセンスを感じていた河内監督は外野手として起用することを決めた。

 「将来的に投手をさせるために、体を大きく使って投げる練習をさせたかった」

 その狙い通り、体を最大限生かす投球フォームを身につけ、中学2年の11月ごろには最速130キロ中盤まで達した。また、負けん気の強さも健在だった。中学3年春の県大会では中堅手として先発起用。しかし、先発投手がピンチをつくると、中堅付近から指揮官に視線を送った。

 「私の方を見ながら左腕をぐるぐる回すんですよ。まだか、まだかというようにね。とにかく投げたかったんでしょうね」

 アピールし続ける左腕を登板させると見事に救援成功。野球一筋と決めた後はメキメキと能力を伸ばした。「小学校の時は嫌なことから逃げがちだったけど、柔道で負けん気を覚えた。勝ちたいと思うようになった」。県内ではズバ抜けた存在へと成長。「一生、野球を辞めない」。智弁学園(奈良)進学後も恩師との約束を守った陵人の才能は強豪校で開花したのだった。(松本 航亮)

 ◇伊原 陵人(いはら・たかと)2000年(平12)8月7日生まれ、奈良県橿原市出身の24歳。小1から晩成フレンズで野球を始め、主に投手。八木中では軟式野球部。智弁学園では2年春から背番号11でベンチ入りし2年秋から背番号1。3年春に甲子園出場。大商大では2年秋に最優秀投手、3年春に最多勝、最優秀防御率でベストナインを受賞。NTT西日本では2年連続で都市対抗出場。1メートル70、77キロ。左投げ左打ち。

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