巨人・橋上作戦戦略コーチ 11年ぶり復帰の軍師が明かした改革スキーム
スポニチアネックス / 2024年12月2日 5時31分
11年ぶりの巨人復帰となった橋上秀樹作戦戦略コーチ(59)が、本紙のインタビューに応じた。現役時代、指導者となった後も野村克也氏のもとで薫陶を受け、データに基づいた野球理論は球界随一。前回コーチを務め3連覇に貢献した12~14年に実施していた「個別ミーティング」を徹底し、得点力アップを目指す来季について語った。(聞き手・青森 正宣)
――「作戦戦略コーチ」としての役割は。
「“作戦戦略”という名称を考えれば、いかに点を取っていくか。今季の攻撃の成績を見れば、みんなある程度のレベル、数字も含めて上げていかないと。投手と守備力で何とか優勝できたけど、そこから上には残念ながらいけなかった。攻撃力をプラスできれば」
――改善できそうな数字は。
「やっぱり出塁率と長打率。OPS(出塁率+長打率)は大事。昨年、阪神が長打率と出塁率を向上させて優勝。見習うべき点ではある」
――今季はリーグ3位のOPS・658。1位のDeNAは・688だった。
「理想を言ったら・700。東京ドームは本塁打が出やすい球場と言われている。でも、長年の売りだった長打力が今年はちょっと陰りが見えた。来季の陣容はまだ分からないけれど、飛躍的に本塁打が増えるというのはなかなか難しい。だから、出塁率がOPS全体を押し上げるポイントになる」
――OPSを上げるために。
「長打を狙っていい状況、カウントなのかどうかをまず選手には伝えたい。長打が出やすいという球場で、最初からそれを捨ててしまっているバッターもいるような気がする。場合によっては長打を前面に出して振ってもいいんだってことを浸透できれば」
――そのために必要なことは。
「それが“割り切り”というところ。普通に考えれば投手に比べて、打者は受け身で成績を出すのが難しい。確率の悪い勝負を挑んでいる以上、“少ない目だけどそっちが出た時だけは勝負になる”というようなボールの待ち方、心境に持っていかないととても点は取れない」
――三振OKというような考えか。
「野球界ってどうしても三振、見逃し三振に対してネガティブなイメージがある。奨励するわけではないけど、近年の投高打低の中で、打者が成績を残していく、点を取っていくためには“結果的に三振しても仕方ない”くらいの考え方をしない限り、得点力は上がっていかない。今までと同じような対策を描いていても難しい。何か対策を練らないとどんどん右肩下がりで落ちていくのは目に見えている。歯止めをかけるため、違った切り口を浸透させていければいい」
――阿部監督から求められていることは。
「私が前回いたときは選手と戦略コーチだった。その時にやっていた個人に特化したコミュニケーションを今の選手に対してもやってほしいと。ミーティングでも相手投手の傾向は全体的なものが出るが、例えば松本選手(哲也=現外野守備兼走塁コーチ)と阿部選手は同じ左打者でも、配球は変わってくる」
――秋季キャンプでは選手と積極的に話していた。
「まずは選手個々の性格、能力を含めてできるだけ正確に把握することが大事。私の人となりも理解してもらいながら信頼関係を築かないとその後、試合や投手の対策を話しても聞いてもらえない」
――選手に春季キャンプまでにやってきてほしいことは。
「秋季キャンプにいたメンバーには全体ミーティングで30分弱、話はさせてもらった。来季は“こういうものをやっていく”“今の時代はこういうものが必要じゃないか”“こういう状況だから、こういう割り切り方もいいんじゃないか”といった投げかけみたいなことを書いた紙を渡している。この期間中にもう一回読み返すなりして、理解してもらいたい。頭の中を耕しておいてくれれば」
――その上で個別ミーティングを行う。
「春季キャンプ期間中にも個人個人に話をしていこうと。シーズンを通しても継続してやっていければ。その中で、選手が“これをやったことによって結果に結びついた”と成功体験を積んでもらって、選手の方から望んでもらえるようになっていくのが理想だと思っている」
≪絶大な信頼…若き指揮官と選手のよき話し相手≫【取材後記】橋上コーチは巨人に復帰した決断の理由を「いつかは名選手だった阿部慎之助を名監督にする手助けができたらいいなと思っていた」と語った。安田学園の後輩でもある阿部監督からの信頼は厚い。
前回、戦略コーチに就任した12年。打席によって集中力にむらがあった選手・阿部に「1年だけでいい。一生懸命、真剣に野球に取り組んでくれないか」と提案した。試合中に寄り添って声をかけ、捕手の守備でのストレスを軽減。プロ12年目で初めての打撃タイトルとなる打率.340、104打点の2冠王獲得につながった。
退団後も交流は継続。今季、第20代監督になった後輩の話し相手にもなった。「野球以外の話も含めて、いい意味でストレス発散に使ってもらったんじゃないですか」。来季も若き指揮官と選手のよき話し相手になるだろう。(巨人担当・青森 正宣)
◇橋上 秀樹(はしがみ・ひでき)1965年(昭40)11月4日生まれ、千葉県出身の59歳。安田学園から83年ドラフト3位でヤクルト入団。92年から代打として頭角を現し、同年日本シリーズで8打数5安打などリーグ優勝に貢献。日本ハム、阪神を経て、00年に現役引退。05年から楽天、巨人、西武、ヤクルトでコーチを歴任。13年WBCでは侍ジャパンの戦略コーチを務めた。20年からBC・新潟(現オイシックス)の監督。右投げ右打ち。
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