【元横綱・稀勢の里コラム】大の里 九州場所の苦い経験を生かして
スポニチアネックス / 2024年12月4日 7時1分
今年も残すところあとわずか。納めの場所も終わりましたので2024年を振り返りたいと思います。
二所ノ関部屋としては3年目を迎え、全体的にはいい1年でした。大の里が大関に昇進し、幕内最高優勝も2度。昇進行事の準備などで部屋のスタッフ、力士らは貴重な経験をしました。大の里が初場所の支度部屋で賜杯を抱いて後援者らと記念撮影に納まる照ノ富士の姿を見て優勝に憧れたように、若い衆にも同様の効果を期待したいものです。幕下以下は目立った活躍はなかったですが、新弟子は初場所から名古屋場所まで4場所連続でデビュー。体づくりができている力士も増えてきたので近い将来必ず実を結んでくれると願っています。
初場所は新入幕だった大の里はわずか5場所で大関に昇進しました。6場所で65勝。平均で10勝以上は上出来です。ただし、彼にとっては大関になってからが本当の勝負。九州場所は課題も多く見つかりました。秋場所で敗れた阿炎と若隆景にはまたしても敗れ、秋巡業を途中で離脱した影響もあり、最後まで体のハリが戻らなかった。調整方法はアマチュアとは違いますし、不調だったから勝てないは言い訳になりません。安定した成績を残すために、体調が悪い場所でも場所前の調整でどこまで持っていけるか。九州場所の苦い経験を生かしてほしいところです、
白熊はケガにも泣かされた1年でした。春場所で初めて休場し、名古屋で十両優勝した後の新入幕場所でも休場。ケガとの付き合い方も大事と痛感したでしょう。体格面も含めいいものを持っているので、それを生かすための工夫、「考える」ことを厳命したい。まだ、いろんな意味で修業が足らない。幕内に戻って定着できるよう、私も指導していきたい。
大の里、尊富士ら、相撲界は新勢力の台頭が目立つようになりました。そんななかでも大関陣が最後を締め、来年の楽しみが増えました。休場が多くても出場すれば優勝する照ノ富士の力は抜けています。彼を倒して世代交代をしないと綱は近づきません。
今年も審判委員として土俵下から熱戦を見守ってきました。おかげさまで今年は連日満員の盛況。それに応える力士の奮闘ぶりも称賛に値しますが、幕内前半の力士に粘りがなく、あっけなく負ける場面が散見されました。幕内下位も面白いぞ!と思わせるような、さらなる土俵の充実を期待します。
(元横綱・稀勢の里)
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