NPB 牛骨によるバットの「表面加工」来季解禁へ 打者の“打感”向上…本塁打増につながるか
スポニチアネックス / 2024年12月4日 3時2分
日本野球機構(NPB)が来季から牛骨によるバットの「表面加工」を解禁することが3日、分かった。2日に都内で行われた実行委員会で12球団に通達された。圧縮バットが禁止された1981年ごろから禁止されていたが、来年から禁止事項を外れ、打撃の感覚など打者の飛距離アップにつながる可能性がある。近年は投高打低の傾向が強いプロ野球において、「華」でもある本塁打数の増加が期待される。
牛骨でバットの表面をゴリゴリとしごいて木目を詰める加工はメジャーでは一般的。近年はメジャーでプレーする日本人も増え、そのバットの使用を希望する国内選手も増加してきた。ある球界関係者は「選手は打った時の感覚を大切にする。打感や音が変われば成績向上につながる可能性がある」と期待する。
NPBは今季まで禁止してきた牛骨による「表面加工」について独自に反発係数などを調査。数字は変わらないとの結果が出たことで、10月の野球規則委員会で解禁することが決まり、前日に行われた実行委員会で12球団に正式に通達された。バットの「中」を強化するのではなく、牛骨の成分によって木目が詰まる表面加工。打った時に「硬い」感覚になるといわれ、音の響き方も変わるという。打者は感覚が良くなることで、成績向上につながる可能性がある。
かつては長嶋茂雄、榎本喜八、大杉勝男ら伝説級の打者たちがバットの芯を牛骨でしごいて脂を木目に染み込ませていた。それが1981年に反発力の高い「圧縮バット」が禁止され、同時期に牛骨などでの表面加工も禁止に。だが、メジャーでは表面加工が一般的なことなど、時流を踏まえてNPBが調査したことで、牛骨による加工が「圧縮」とは別物であることが示された。
近年、日本のプロ野球では本塁打数が減少し「投高打低」が顕著になっている。昨季は1250本だった総本塁打数は275本も減少し、今季は12年以来、12年ぶりに3桁となる975本だった。データ解析全盛でフォームの再現性が高まったことによる球速アップなどが理由に挙げられる。緊迫した投手戦が増えた一方で、野球の華である本塁打数の減少はファン離れに直結する可能性もある。後半は例年通りのペースで本塁打が増え、さらに来季からバットの表面加工が一部解禁されることを受け、ある選手は「来年はボールが飛びやすくなるかもしれない」と期待する。
すでに日本プロ野球選手会を通じて各選手への周知も始まっている。バット基準の一部改定で、2025年のプロ野球はより面白くなる。
≪今季まで5年続けて本塁打数減少≫今季の本塁打数はセ472本、パ503本を合わせた975本。両リーグの合計本数が1000本に満たなかったのは、低反発球を使用した11、12年の939本→881本以来12年ぶりとなった。また、1試合の平均本塁打数を見ると、10年以降では最多の19年から1.97→1.79→1.69→1.52→1.46→1.14と、今季まで5年続けて減少している。
【バット規定変遷】
☆圧縮バットの禁止 先端から中心へポリエステル樹脂を注入してプレス機で圧縮したもので、1957年に耐久性の向上を目的に開発。巨人・王貞治が愛用したことで知られるが、各社の開発競争により反発力が高められ、打者が有利になりすぎるとの声が上がり、81年から「飛びすぎる」との理由で使用禁止。表面加工も同時期に禁止となった。
☆色の規定 巨人・川上哲治の「赤バット」や東急・大下弘が「青バット」を使用して人気を博したが、不正加工の隠蔽(いんぺい)を防ぐため、64年に着色が禁止。その後、81年に木目が分かる範囲でのダークブラウンを解禁し、02年に赤褐色、05年に黒を認定。現在はその他にバットの素材そのものの色、淡黄色が認められている。
☆グリップの直径 安全面に考慮し、20年からバットのグリップの太さを直径2.25センチ以上に変更。これまで直径については規定がなかったが、NPBの調査でグリップの細いバットは折れやすいことが判明。折れた先端部分が守備側の選手に当たったり、観客席に飛び込む危険性を考慮した措置とした。
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