「海に眠るダイヤモンド」命懸け、危険と隣り合わせだった炭鉱員…肺を患う危険性も 識者解説
スポニチアネックス / 2024年12月4日 16時4分
俳優・神木隆之介(31)が主演を務めるTBS系日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」(日曜後9・00)第7話が、8日に放送される。物語の舞台となる長崎・端島について、本作の監修を手掛ける黒沢永紀氏が解説する。
<以下、ネタバレあり>
本作は、1955年からの石炭産業で躍進した長崎県・端島と、現代の東京を舞台にした70年にわたる愛と友情、そして家族の壮大な物語。「アンナチュラル」(2018年)、「MIU404」(2020年)、現在上映中の映画「ラストマイル」など数々のヒット作を生み出してきた、野木亜紀子×塚原あゆ子×新井順子という強力チームが手掛ける。戦後復興期から高度経済成長期の“何もないけれど夢があり活力に満ちあふれた時代”にあった家族の絆や人間模様、青春と愛の物語を紡いでいく。
物語の舞台となる端島は、長崎港から船で約40分のところに位置しており、「明治日本の産業革命遺産~製鉄・製鋼、造船、石炭産業~」の産業遺産群の一つとして、世界文化遺産に登録された半人工の島。岩礁の周りを埋め立てて造られた海底炭鉱の島には、日本で初めて高層鉄筋コンクリートのアパートが建てられた。
最盛期には約5300人もの人が住み、当時世界一の人口密度を誇るほど賑わっていた。さらに、端島炭鉱の石炭はとても良質で、日本の近代化に大きく貢献した。
劇中に登場する、現代の東京からは想像できない環境での暮らしは、一体どんなものだったのか。本作の監修を手掛ける黒沢永紀氏の解説とともにひも解いてい
く。
【日本初の海底水道完成で島のライフラインが整う!】
第2話では、島を襲った台風の影響で給水船の運航がしばらく止まり、海水での生活を余儀なくされた島民たち。実際の端島でも同じようなことが幾度となくあったという。
台風がこなくとも川や湧水などの水源がない端島では、水は大変貴重なもの。海底水道ができる前の端島には、1日に3回、真水を運搬する船がやってきて1500トン分のタンクに貯水。炭鉱長の邸宅や職員住宅には水を運ぶ従業員が。炭鉱員たちは毎日自分で、給水栓のもとへ行き、水券と交換に水を自宅へ運んだ。1日に1回汲んだ水を水瓶に溜めて、少しずつ大切に使っていたのだ。
第1話で描写された炭鉱員の風呂も一番湯と二番湯までは海水、上がり湯のみ真水だった。「いくつかの浴槽を経由して汚れを落とし、最後に真水のシャワーで洗い流す。炭鉱員は怪我も多かったと思いますが、おそらく海水が滲みて痛かったのではないか」と、黒沢氏は推察する。風呂と同じように多くの水が必要な学校のプールも海水を使用。特にタンクの水がなくなると、各家庭でも洗濯の下洗いに海水を使用するなど、工夫して生活する必要があったのだ。
そんな日常の不便さを解消するために立ち上がったのが、第3話で登場した海底水道プロジェクト。アメリカの原油パイプライン技術を参考に、端島と隣の高島を、本土の野母崎の水源と繋ぐ、水深45メートル、延べ11キロメートルにも及ぶ、世界でも類を見ない日本初の海底水道が造られた。
海底水道の完成後は各家庭の蛇口を捻れば水が出るようになったのだが、それまで制限されていた反動もあってか水の使いすぎが多発。最初に用意した水源地だけでは足りなくなり、最終的に大きな貯水池を造るまでの5年ほどは節水生活が続いたという。
【「本日もご安全に!」地底を掘り進む海底炭鉱での作業は命懸け】
「あの海の下を1,000メートル下に掘ると、まだ誰も手を付けていない黒いダイヤモンドが眠っとる」。第2話での炭鉱員の進平(斎藤工)劇中のセリフ通り、端島の炭鉱員が作業する坑道はかなり深いところにあった。「東京スカイツリー(634メートル)」を埋めても届かない距離といえば、その深さがイメージできるだろうか。
炭鉱員の仕事は24時間3交代制。坑道は地熱で気温35℃、湿度80%超えの環境だ。「炭鉱員にとっては掘る作業で使う体力よりも、熱い中での作業に慣れることができるかが重要でした。慣れていないと脱水状態になってしまうので、意気揚々と坑内に入って早々にバテてしまう初心者もいたと思います」と、黒沢氏が説明する。語る黒沢氏の言葉は、第1話であわや大事故になりかけた金太(阿部亮平)と銀太(羽谷勝太)を彷彿とさせる。
過酷な環境下で行われる炭鉱員の仕事は、文字通り命懸け。「危険と隣り合わせの坑内での作業は日々恐怖とのせめぎ合いだったと思います。落盤や坑内火災、そしてガス爆発など、坑内での作業は様々な命の危険と隣り合わせでした。特に切羽(きりは)と呼ばれる最前線で石炭を採掘する採炭員や坑道を掘り進む掘進員は、確実に粉塵を吸い込んでしまうので…」。予期せぬ事故はもちろんのこと、長きにわたり坑内で働くことで作業中に粉塵を吸入し、「珪肺(けいはい)」という病を患う可能性もあったのだ。第1話で咳き込んでいた鉄平主人公の父・一平(國村隼)も長きにわたり炭鉱で働いているため、肺が限界を迎え週に3日しか働けなくなっている。
炭鉱での仕事は専門職。ジョブローテーションのようなシステムはなく、基本的に一度就いた担当から変わることはなかったという。そして、同じ炭鉱員でも坑外で働くほうが肺の病を患う可能性は低かったのだが、最前で働く炭鉱員はみんな自ら希望するのが基本だったそう。「採炭の仕事は一番給料がいいけれど、それは命を危険に晒す作業を覚悟の上での仕事でもありました」と、黒沢氏は思いを巡らせる。
原料がダイヤと同じ炭素であることから“黒いダイヤモンド”といわれた石炭。当時、端島が産出する石炭の単価は国内で一番高く、それ故に端島の人々は豊かな生活を送ることができたのだ。
黒沢氏は、福岡・筑豊の炭鉱で働き、その様子を記録に残した山本作兵衛についても言及。彼は後に国内初の「世界記憶遺産」となった自伝にこう記している。
「炭鉱は日本社会の縮図」――
日本各地から集まってくる島で働く人々の中には、企業のエリートだけではなく、さまざまな事情を抱えた人がいたという。「その環境は社会の構造そのまま。まるで端島が1つの国家のようだったんです」と、黒沢氏は現代日本を築き上げた、国家の縮図のような端島に思いを馳せるのだった
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
『海に眠るダイヤモンド』なぜ端島? 監修・黒沢永紀氏が魅入られた理由
ORICON NEWS / 2024年12月11日 17時0分
-
日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」進平(斎藤工)の衝撃ラストにSNS「死亡フラグ?」「鉄平がリナを守らなきゃで1話冒頭の小舟シーンに?」「戸籍の伏線が回収される?」
iza(イザ!) / 2024年12月9日 10時23分
-
海底1キロまで掘った大炭鉱で爆発炎上…日曜劇場の舞台・軍艦島が「閉山のカウントダウン」を始めた決定的瞬間
プレジデントオンライン / 2024年12月8日 19時15分
-
軍艦島の「半地下の食堂」から「独身女子寮」まで日曜劇場の再現度は驚異的…家賃ゼロの炭鉱夫の破格の収入は
プレジデントオンライン / 2024年12月8日 10時15分
-
『海に眠るダイヤモンド』端島炭鉱の実態は? 監修・黒沢永紀氏が解説
ORICON NEWS / 2024年12月4日 10時8分
ランキング
-
1フジテレビ「だれかtoなかい」「ワイドナショー」来年3月で終了 過去に松本人志が出演していた2番組
スポニチアネックス / 2024年12月12日 18時8分
-
2フジモン、大大大嫌いな芸人を実名ぶっちゃけ!生放送でブチギレ「なんやねんコイツは!」
スポニチアネックス / 2024年12月12日 16時12分
-
3King&Prince永瀬廉の歌唱に「音程がズレてる」高橋海人と明暗、ファンが気にする不調の原因
週刊女性PRIME / 2024年12月12日 19時0分
-
4【中山忍】 姉・中山美穂さんへの追悼コメントを発表 「姉は『大好きなお姉ちゃん』であるとともに『みなさんの中山美穂』であり、『永遠のシャイニングスター』です」 【全文】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年12月12日 17時0分
-
5古賀紗理那、トーク番組での「アホな人」発言にタレント業の不安…先輩はベビーカー論争でSNS炎上
週刊女性PRIME / 2024年12月12日 18時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください