【阪神 火の玉ルーキーズ】育成1位・工藤泰成 高校時代に毎食「納豆10パック」指令を完遂し球速アップ
スポニチアネックス / 2024年12月12日 5時17分
阪神が今秋ドラフト会議で指名した9選手のこれまでの足跡を、「火の玉ルーキーズ」と題して振り返る。育成1位・工藤泰成投手(23=四国・徳島)は明桜(現ノースアジア大明桜、秋田)時代に背番号1をつけた経験がなく、東京国際大卒業時に指名漏れも経験。独立リーグで開花した遅咲きの剛腕が、早期の支配下を見据える。
父・一範さん(53)、母・麻紀さん(52)から「安泰に成長してほしい」と望まれた泰成は、大病とは無縁の幼少期を過ごした。野球との出合いは秋田東小3年。野球好きだった父の影響で、同小在籍の児童で結成されたチームに入り、投手、捕手、三塁を兼任した。
仲間と白球を追う楽しさを知った泰成は、小5から父の転勤に伴い渟城(ていじょう)西小へ転校した。野球は継続し、能代一中でも迷わず軟式野球部に入部。女子部員もいる和気あいあいとしたチームで、1、2年時は三塁を任され、3年時に「できる選手が僕しかいなかった」という理由で投手に転向。結果的にこの“コンバート”が、未来を大きく変えることになった。
ただ、部員一丸となって勝利を目指しながら、全国大会などの大舞台とは縁がなかった。「弱小で、秋や春の地区予選では全部1回戦負け。熱が冷めてしまった」。高校で野球を続ける気はなく、自宅から通いやすいことから明桜に進学。「面接でも“バドミントン部に入ります”と言っていました」。入学式直前までその思いは変わらなかったが、再び「父の一声」が泰成の人生を変えた。
「せっかく明桜に行くなら、野球やってみな。3年間試合に出られなくてもいいから」
熱は冷めたと言いながら、火がくすぶってもいた。父の後押しで情熱が再燃。県内屈指の強豪で、泰成の第2章が幕を開けた。
入学当初は遊撃と投手。やる気にあふれる泰成に衝撃を与えたのが、1学年上の山口航輝(現ロッテ)だ。「フリー打撃の打球が速すぎて…“これは野手では勝てない”と。そこから投手一本」。120キロ台だった直球の速度アップが当面の課題。輿石重弘監督(61)の指示で、体づくりの基礎となる「タンパク質」の摂取を目的に、毎食「納豆10パック」が課された。効果てきめん。130キロ超まで球速は上がり、登板機会は増えた。
3年夏は秋田大会準優勝。聖地のマウンドは踏めず、セレクションを受けて東京国際大へ。真剣に将来を考え始めた2年冬からウエートトレーニングに没頭。体重を65キロから80キロまで増量させる肉体改造が奏功し、3年春には153キロを計測した。大卒でのドラフト指名は逃したが、四国・徳島入団1年目で才能が開花。先発、中継ぎをこなせる万能性と最速159キロの剛球を引っさげ、猛虎へと入団した。
「最短で支配下登録されて、息の長い選手になりたいです」
節目で野球へと導いてくれた父への感謝も胸に、一日も早く3桁背番号に別れを告げる。 (八木 勇磨)
◇工藤 泰成(くどう・たいせい)2001年(平13)11月19日生まれ、秋田県出身の23歳。秋田東小3年時に野球を始め、捕手と三塁。能代一中では軟式野球部に入り、3年から本格的に投手転向。明桜では2年秋に背番号18でベンチ入り。東京国際大を経て、今年から四国・徳島でプレー。今季は8勝でリーグ最多勝を獲得。遠投120メートル、50メートル走6秒2。1メートル77、82キロ。右投げ左打ち。
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