【阪神 火の玉ルーキーズ】育成2位・嶋村麟士朗 大学中退から独立L入団は夢への近道に
スポニチアネックス / 2024年12月13日 5時19分
阪神が今秋ドラフト会議で指名した9選手のこれまでの足跡を、「火の玉ルーキーズ」と題して振り返る。育成2位・嶋村麟士朗捕手(21=四国・高知)が、NPB(日本野球機構)入りへの近道として選択した道は大学中退からの独立リーグ入団だった。中学3年時に出会った同学年右腕の存在、そして夢追い人が集まる場所で出会った2017年のセ・リーグ最多セーブ投手が成長を後押しした。
麟士朗と野球の出合いは小学5年の時だった。友達の影響で白球を握るようになった。周りより少し遅い野球人生の始まりだったが、すぐに非凡な才能を発揮。両親の勧めで、小学1年から続けていた水泳のおかげで優れた柔軟性が備わっていた。打撃では持ち前の腕の柔らかさを生かし、どんなボールにも対応。広角に打球を運ぶ技術は、水泳で得た“産物”だった。
「水泳のおかげで、体は柔らかかったですね。ボールを前に飛ばすのは初めから得意でした」
ボールを捉える技術は際立っていた一方で、打球に角度がつかない課題もあった。「もっと遠くに飛ばしたい」。それが初めて見つけた目標だった。打球を飛ばすためには、下半身の強さが必要と自己分析。中学入学後は、下半身強化のため自宅近くの山道を走ることを自身に課した。
日課は5キロのランニングと、100メートル程度のダッシュを10本。過酷な自主トレメニューだったが、苦にはならなかった。「山の中からいろんな景色が見えて楽しかった。空気もおいしくて、走っていて凄く気持ちよかった」。地道な努力の成果は打球の質に表れた。確実に打球の角度は上昇。その打力を買われ、中学3年時には高知県の選抜選手にも選出された。
「今でも、あの山道を走っていてよかったなと思います」
選抜メンバーの一員として参加したチームで「自分の野球観が180度変わった」という出会いがあった。同じチームには、後に阪神で同僚となる森木がいた。目的意識を持って練習を行う同学年右腕の姿を見て意識の違いを痛感。また、バッテリーを組んで臨んだ試合ではすさまじい球筋にも衝撃を受けた。
「試合に入る前の準備から、黙々とやっていた。こういう選手がプロに行くのかと思った。流れに任せて準備をしていた自分が恥ずかしかった」
初めてプロを意識した瞬間だった。森木との出会いをきっかけに麟士朗の目標も大きく変化。「絶対にプロになる!」。そこから野球のためにすべての時間を割いた。高知商を卒業後、一度は福井工大に入学するもわずか3カ月で中退。NPB入りへの近道として選択した道は独立リーグ四国・高知への入団だった。
「(中退して)家族に迷惑をかけてしまったけど、絶対にプロに行きたかったので決断した」
ターニングポイントとなった決断は正しかった。四国・高知にはNPB入りだけを目指す選手たちが集結。「NPBへ行く執念というかハングリー精神を持った選手ばかりだった。勝手にモチベーションが上がるような環境でした」。精鋭ぞろいのチームには16年からわずか4年間でNPB通算96セーブを記録した元阪神ドリスもいた。17年には最多セーブのタイトルも獲得した助っ人右腕からは内角の使い方など高いレベルの配球を学んだ。セールスポイントだった打力に加え捕手としても急成長。その結果が、今秋のドラフト指名につながった。
NPB入りの夢はかなった。しかし夢には続きがある。それは野球人生の原点となった地元の高知県で野球を、さらに普及させることだった。「早く支配下になって、まずは小学生に憧れられる選手になりたい」。大きな原動力を兼ね備えた大器は故郷に思いをはせ、3桁背番号からはい上がる。(松本 航亮)
◇嶋村 麟士朗(しまむら・りんしろう)2003年(平15)7月13日生まれ、高知県高知市出身の21歳。潮江東小5年から潮江東スポーツ少年団で野球を始め、潮江中では軟式野球部に所属。高知商では甲子園出場なし。福井工大を中退して22年8月に四国・高知入団。1メートル77、90キロ。右投げ左打ち。
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