人口2万7168人の町から生まれた“スター”の凱旋 元日本ハム・鍵谷氏の地元で感じた愛される理由
スポニチアネックス / 2024年12月14日 7時17分
町民から愛されているのが伝わった。今季限りで現役引退した元日本ハムの鍵谷陽平氏(34)のことだ。13日、生まれ故郷である北海道七飯町から町民栄誉賞を受けるということで取材へ向かった。札幌から約4時間半、雪道を運転して到着した道南の町は温かさに包まれていた。
同町役場の入り口に入ると熱烈な歓迎ムードが広がっていた。鍵谷のカラーでもある紫のTシャツを着用した大勢の町民や職員が集結。出身少年団である七小スポーツ少年団の子供たちの姿があり、人口2万7168人の町から生まれた“英雄”の凱旋(がいせん)を心から待ちわびていた。
同町で過ごしたのは中学3年まで。高校は札幌市内の北海、大学は都内の中大と地元を離れて名門で爪を研いだ。それでも、12年ドラフト3位で日本ハム入団が決まると翌年から地元の後援会が発足。年に2、3回ほど団体ツアーを組んで、札幌市内まで応援に駆けつけていたという。
七飯町の杉原太町長(61)は「後援会は初年度こそ3~40人でしたが、今では70人ほどに増えました。80歳のおじいちゃん、おばあちゃんもいるくらい、みんなが鍵谷さんを応援していました」と言う。町の成人式ではビデオメッセージをお願いすると快諾してくれたといい「本当に好青年で人当たりが良くて」と笑顔が緩みっぱなしだった。
記者も鍵谷氏をプロ2年目から取材してきた。常に謙虚で素晴らしい人間性の持ち主とは知っていたが、町民にここまで応援され、愛されている存在とまでは知らなかった。同町は日本での西洋リンゴ発祥の地であり、杉原町長は「PRをお願いできれば」と、「リンゴ大使」の襲名も検討されているほどだった。
鍵谷氏に同町の存在を尋ねると、笑顔でこう答えてくれた。「札幌ドームに紫のTシャツを着た一団がいるからすぐ気付いていたよ。やっぱり、同じファンだけど地元のファンはひと味違う。遠くからバスで応援に来てくれてね。来季もファイターズには残るので地域貢献を通したスポーツ振興を意識して生活していきたいなと、改めて感じました」
日本ハム、巨人のセ・パ両リーグで優勝に貢献。プロ12年間で通算420試合登板の活躍が称えられた勲章だった。表彰式後の囲み取材直前。少年団の子がサインを欲しそうにする姿に気付いた鍵谷は、優しくこう声を掛けた。「後で書いてあげるからちょっと待ってて」。誰からも愛される理由が分かった気がした。(記者コラム・清藤 駿太)
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