「光る君へ」最終回 武士の時代へ…まひろ台詞で幕!ラストは3年前に決定「簡単には…」大石静氏語る裏側
スポニチアネックス / 2024年12月15日 21時0分
◇「光る君へ」脚本・大石静氏インタビュー
脚本家の大石静氏(73)と女優の吉高由里子(36)が3回目のタッグを組んだNHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜後8・00)は15日、15分拡大で最終回(第48回)が放送され、完結した。「源氏物語」の作者・まひろ/紫式部と源倫子(黒木華)の“ラストバトル”、時の最高権力者・藤原道長(柄本佑)の最期、そして、まひろの再びの旅立ち…。まひろと道長の“特別な絆”を切なく、内裏の権力闘争を生々しく紡ぎ上げ、見る者の心をわしづかみにしてきた大石氏に最終回の作劇の舞台裏を聞いた。
<※以下、ネタバレ有>
「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛~僕を忘れる君と」などの名作を生み続ける大石氏がオリジナル脚本を手掛けた大河ドラマ63作目。千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となった。
平将門を主人公にした1976年「風と雲と虹と」に次いで大河史上2番目に古い時代が舞台。平安中期の貴族社会を題材にした大河は今回が初となった。
最終回は「物語の先に」。ラストシーンは長元元年(1028年)。まひろ(吉高由里子)は年老いた乙丸(矢部太郎)を伴い、再び旅に出る。道中、武者の一団と遭遇し、その中には双寿丸(伊藤健太郎)の姿も。双寿丸を見送ると、まひろは「嵐が来るわ」――。
紫式部は生没年不詳で、まひろは“生存エンド”。道長は史実通り、62年の生涯に幕を閉じた。双寿丸が「東国で戦が始まった」と語ったのは「平忠常の乱」(長元元年、1028年)。因果関係はないものの、道長が世を去った万寿4年の翌年、大規模な反乱が起こるのは象徴的だ。
大石氏は「このドラマは道長が亡くなり、武士の時代の到来を感じさせて終わろう、時代の変わり目を感じるまひろの台詞で締めくくろうと、当初から決めていました」。3年4カ月に及んだ執筆期間のうち、最初の約半年はスタッフとの“本打ち”(台本打ち合わせ)に時間をかけ、全体プロットを練りに練った。
「大河や朝ドラのような長い作品は、途中でやることがなくなるのが一番危険です。なので、まず全体の構成をしっかり固めて“よし、これでイケる!”となってから初めて第1話を書き始めました」。執筆スタート後、別パターンのラストが頭をよぎったことは?と水を向けると「半年間、みんなで徹底的に議論して“これでイケるね”と揺るぎないプロットを作り上げたわけですから、そう簡単には変わりませんよ」。ということは、約3年前にこのドラマのラストは決まっていたわけだ。
「双寿丸は明日の命の保証もない武者で、貴族ではない人が活躍する新しい時代に移り変わる象徴です。貴族には必ず従者がいて、特に女性の一人旅なんて無理ですから、最後も乙丸がお供しました」。紫式部が「源氏物語」で主人公・光源氏の最期を描かなかったように、大石氏も「光る君へ」でまひろの最期を描かなかった?と尋ねると「そういうリンクはないです」と笑った。
最終回冒頭には、倫子VSまひろを持ってきた。まひろは約40年にわたる道長との関係を洗いざらい打ち明けた。
「まひろは道長の臨終に立ち会えるような身分ではないですが、このドラマの最終回は、何とか2人を一緒にいさせたいと思い、みんなで知恵を絞って、まひろと対決した倫子が、最後は道長のために、まひろを呼び寄せ、会わせてあげる流れにしました」と解説。
「第42、43回付近にまひろと倫子の対決を描く案もありましたが、道長の出家や刀伊の入寇など大事な事柄が霞んでしまいそうで、最終回に取っておくことにしました」。倫子の“名探偵ぶり”や三角関係の行方に終始、視聴者の関心が高く「それはありがたかったですけど、視聴者の反応で展開を変えるということはありません。いい作品になるかどうかは、自分たちが信じた道を貫けるかに懸かっていると思いますから」と明かした。
「まひろはいわゆる健気なヒロインではないので、倫子に道長との関係を問われた直後に、本当のことをぶちまけてやろうと覚悟します。そういう彼女の怖さを出そうと考えて、台詞を書きました。倫子に関しては、若い頃なら取っ組み合いになるぐらいの怒りを爆発していたかもしれないですけど、もう60代ですからね。男と女のことはゴチャゴチャ言わないけど、私の娘も裏切ったわね。どういうつもりで彰子(見上愛)に仕えていたの?と。そちらの怒りに持っていこうと思いました」
大石氏が事前に予告した通り、濃密な展開となった最終回。「あと3回ぐらい放送が欲しい」と惜しんでいたが、史実でも道長の次男・頼宗らとの交際で知られる賢子/大弐三位(南沙良)について「堅物の母(まひろ)とは全然違う奔放なキャラクターにしようと考えていて、もっと尺があれば、賢子の男性遍歴も描きたかったです。賢子と道長のシーンも少なくて、それこそ賢子の奔放さを道長がどう思うのかとか、アイデアはあったんですけど、全部落としちゃいました」。“幻のストーリー”も堪能したかった。
美術チームも奮闘し、初の“平安貴族大河”に見事に活写。“非戦国大河”“文化系大河”の可能性を開拓した。
スピンオフも期待されるが、「四納言」のメンバー(公任役の町田啓太、行成役の渡辺大知、斉信役の金田哲、俊賢役の本田大輔)に時々「“僕たちのスピンオフを書かない?”と言われます。応えたい気持ちはありますけど、もう一度、情熱に火をつけられるかどうか。やるなら早くやらないと、忘れられてしまいますから、どうしましょう(笑)」と言及。
3回目の大河挑戦については「体力的にどうかな?でも、やりたいことはやりたいです。華やかなステージですから」。創作意欲やバイタリティーは衰えを知らない。
「光る君へ」は今年9月に脱稿。「いざ休んでも、3日も経つとつまらなくなっちゃって、やっぱり私は仕事をしていなきゃダメなんだなと、あらためて実感しましたね」と根っからの脚本家ぶり。次回作は年明けに始動の予定だったが、早くも主人公の仕事について取材を始めるなどしている。
“大河明け”第1作のオファーが届いた後、「ある事件のニュースを目にした時、これを題材にしたら面白い作品になると思って発想しました。日々、何も感じなくなったら、辞める時じゃないですか。そうならないよう、生涯現役脚本家であるために、あちこちにアンテナを張り巡らせています」。山道でも岩に腰を下ろして筆を手にしたまひろの如く、物語を書く大石氏の旅は続く。
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