日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」は「世界を意識した配役」 P語る 端島の歴史に原爆、反戦への思い
スポニチアネックス / 2024年12月22日 8時31分
俳優・神木隆之介(31)が主演を務めるTBS系日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」(日曜後9・00)最終回が、22日に2時間スペシャルで放送される。同作は、「アンナチュラル」(2018年)、「MIU404」(2020年)、現在上映中の映画「ラストマイル」など数々のヒット作を生み出してきた、野木亜紀子氏×塚原あゆ子氏×新井順子氏という強力チームが手掛けた話題作。現場をまとめる新井プロデューサーに、作品に込めた思いを聞いた。(中村 綾佳)
本作は、1955年からの石炭産業で躍進した長崎県・端島と、現代の東京を舞台にした70年にわたる愛と友情、そして家族の壮大な物語。戦後復興期から高度経済成長期の“何もないけれど夢があり活力に満ちあふれた時代”にあった家族の絆や人間模様、青春と愛の物語を紡いでいく。
俳優陣の熱のこもった演技が表現する人間模様もさることながら、視聴者を引き込んでいるのは、当時の端島を再現した緻密なセットが生み出している壮大な映像だ。物語の舞台となる端島は、岩礁の周りを埋め立てて造られた海底炭鉱の島。日本で初めて高層鉄筋コンクリートのアパートが建てられ、最盛期には約5300人もの人が住み、世界一の人口密度を誇るほど賑わっていた。新井氏は「端島は緑がない特殊な場所。撮影場所を探すのが本当に大変でした」と、その苦労を振り返る。
制作担当の大藏穣氏によると、本作のロケハンに携わったのは5人ほどで、これまでに視察した場所は100カ所以上にも及ぶそう。炭鉱でのシーンも、リアルを求め実際の鉱山で撮影した。「車で走って、歩いて探しての繰り返し。撮影での移動も含めると本作だけでも2万5000キロ以上は走ったのではないでしょうか」と明かす。時間もお金も労力かけた壮大なスケールに、新井氏は「ああ、日曜劇場だな。大規模だなと思いました」としみじみと語る。
そんなこだわりのつまった本作は、構想当初から「世界を意識していた」という。新井氏は、脚本・野木氏とともに「『MIU404』が終わって、『ラストマイル』も書き終えた時に、“日曜劇場をやってみたいね”と話していた」といい「日曜劇場は、TBSの看板。“世界に発信できるような作品が作れるよね”と話していました」と明かす。
「端島」を題材にしたのは“偶然”だった。もともと新井氏は、野木氏とともに旅行で訪れた長崎で「軍艦島ツアー」に参加し、端島の歴史を知った。その時の島の圧巻さ、島民の経験談の奥深さに魅了されたが「この島を(ドラマで)再現するのは難しいだろうな」と、率直な感想を抱いていた。
そんな時に舞い込んだ「日曜劇場」の話。「日本から世界に向けて発信するドラマとして、世界を意識した作品作りがしたいという時に、海外の方も知っている世界遺産・端島はありかもしれない。やってみよう!ということでスタートしました」と、作品が生まれた経緯を明かした。
端島の歴史のみならず、世界に伝えたいメッセージはほかにも。第4話では長崎原爆を描き、反戦のメッセージも込められ“神回”と大きな話題を集めた。土屋太鳳演じる百合子の「爆弾を落とした人たちも、同じ神を信じてた」というセリフをはじめとした重みある言葉の数々は、視聴者の心に深く響いた。そして物語のラストは、現代まで続く長崎の「精霊流し」のシーンで、故人の鎮魂や平和への願いを込めた。「私たちは祈る。今度こそ間違えないように。悲しみを繰り返さないように。強く、いられるように。願いを込めて、祈る」と、鉄平の言葉で締めくくられる。
そんな思いの詰まった作品をより魅力的に表現するため、キャスティングにもこだわり抜いた。主演の神木は“満場一致”で決まり、神木を軸にして「女性3人は、普段ドラマを見ないような方でも…それこそ外国の方が見ても、パッと見て“違う”と思えるような3人にしたい。顔や雰囲気の違う方がいい」と、配役も世界を意識した。こうして決まった杉咲花、土屋太鳳、池田エライザの配役に、野木氏も「それぞれ違うタイプの俳優さんに集まってもらえました。杉咲花さん、池田エライザさん、土屋太鳳さんはパッと見ただけで、明らかに異なるキャラクターを演じているとわかると思います。若い俳優さんを知らない年配の方はもちろん、外国の方が見ても混乱せずに楽しんでもらえると思います」と胸を張る。
「ヒューマンラブストーリー」にとどまらない、壮大なメッセージが込められた作品となった「海に眠るダイヤモンド」。新井氏、野木氏、塚原氏を中心に、キャスト・スタッフそれぞれの思いが込められたこの作品が世界中の人々に届くことを、願いを込めて祈る。
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