阪神・梅野 優勝争いの窮地で光輝いた洞察力と心遣い…9・15ヤクルト戦でゲラの能力信じた高め直球
スポニチアネックス / 2024年12月27日 5時17分
【虎番プレーバック2024】梅野はその瞬間、右拳を前に突き出し、声にならない雄叫びを上げた。し烈な優勝争いのさなかにあった9月15日のヤクルト戦。2―1の9回2死満塁で代打・沢井を迎えると、初球から徹底して「高め」を突いた。カウント1―2からのラストボールも、ゲラに「高めのストレート」を要求。内角のボールゾーンに投げ込まれた160キロにバットは空を切り、薄氷を踏む思いで1勝をつかんだ。
珍しい派手なアクションの理由は、定石の逆を行く会心のリードだったからだ。一打逆転の窮地。打者に見切られやすく、長打も出やすい「高め」を要求するにはハイリスクな場面と言える。しかも沢井には、1週間前の8日にプロ初本塁打を浴びていた。二走の生還阻止へ外野も前進守備を敷く中、セオリーである「低め」に反した配球には明確な意図があった。
「ゲラの心理としては“引っかけたくない”だろうな、と。もし当てたら同点になる」
直前、ゲラは突如スライダーの制球を乱していた。2死無走者から山田(四球)、川端(右前打)、中村(四球)に投じたスライダー10球のうち、7球が左打者の足元側へ外れた。沢井も左。力んだ末の押し出し死球を怖がる投手心理を読み切り「直球なら大丈夫」と力で押し切らせた。
今季の梅野は「高め」の有効活用が目立った。低く、低く――が基本の配球に一石を投じ、リードの幅を広げた。一つの勝利、敗北が大きくものを言う最終盤でも決して慌てず、冷静に状況を分析。プロ11年の確かな経験と実績を証明する「反セオリー」。鋭い洞察力と繊細な心遣いが光り輝いた夜だった。(八木 勇磨)
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