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【内田雅也の追球】名選手に通じる「童心」 日々の鍛錬があればこそ、若さを保てる

スポニチアネックス / 2025年1月7日 8時1分

年賀会に出席した(左から)粟井球団社長、藤川監督、嶌村球団本部長

 先代(12代目)の市川団十郎が生前、NHK教育(Eテレ)の歌舞伎入門で「荒事(あらごと)には若さが必要」と語っていた。「荒事」とは武士や鬼神など荒々しく豪快な演技を指す。いわば正義の役で、初代から市川家のお家芸とされる。三百数十年続く口伝では「童(わらべ)の心で演じよ」と邪心なく演じる重要性を説いている。

 「童心」は野球にも通じるキーワードである。

 戦後、青バットで虹のようなアーチを描いた大下弘は西鉄(現西武)時代、よく自宅に子どもたちを招いて遊んだ。日記『球道徒然草』にある。<「大人になると子供と遊ぶのが馬鹿らしくなる」と人は言うかもしれないが、私はそうは思わない><子供の世界に立ち入って自分も童心にかえり夢の続きを見たい>

 大リーグ史上最高の中堅手、ウィリー・メイズは高い声で「ヘイ!」とあいさつするため「セイ・ヘイ・キッド」と呼ばれた。キッド、つまり少年のようだった。

 ニューヨーク(現サンフランシスコ)・ジャイアンツ時代、球場入りする前、路上で少年たちと野球に興じる有名な写真が残っている。何度も見られた光景だそうだ。

 サトウハチローは現役時代の村山実を『村山実とつみ木』という詩で<村山実には/そのわらべごころが豊富に残っている>と書いている。

 阪神監督・藤川球児はこの日、甲子園で開かれた球団年賀会に出た後、「童心」の大切さを説いた。当初は今季4番を期待する森下翔太について「会えば、非常に子どもっぽい」と言った後、「責任をたくさん背負っている選手ほど、童心に戻りやすいのかもしれません」と話した。同期の松坂大輔も自分もそうだったという。今は監督として選手たちに童心を望んでいるのだろう。

 童心に年齢は関係ない。団十郎も大下もメイズも村山も……皆、ベテランになっても少年の心を失っていなかった。

 冒頭の番組で団十郎は「若さを保つには稽古しかありません」と言い、5代目・団十郎の有名な言葉を引用していた。「一日稽古を怠れば、自分が下手になったと思う。二日稽古を怠れば、相手役に下手がわかる。三日稽古を怠れば贔屓(ひいき)筋に下手がわかってしまう」

 童心にかえるには、日々の鍛錬が欠かせないようである。 =敬称略=

 (編集委員)

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