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株式会社斎藤佑樹とパートナーシップ締結の中垣征一郎氏 「指導者の方々とふれあえる場所つくりたい」

スポニチアネックス / 2025年1月13日 18時28分

本紙インタビューに応じた中垣征一郎氏(提供写真)

 23年シーズンまでオリックスで巡回ヘッドコーチを務めた中垣征一郎氏(54)がスポニチのインタビューに応じた。昨年12月に元日本ハムの斎藤佑樹氏が代表を務める株式会社斎藤佑樹とパートナーシップ契約を締結。斎藤氏と中垣氏とのつながりは、13年に中垣氏が日本ハムでトレーナーとしてリハビリなどを担当したことから始まり、8年ぶりのタッグとなる。日本ハム時代にダルビッシュ有(現パドレス)、大谷翔平(現ドジャース)、オリックス時代に山本由伸(現ドジャース)らを指導。新たな舞台に挑む思いを聞いた。(取材・柳原 直之)

 ――新たな舞台への挑戦。やってみたいことは。

 「これまでスポーツ指導者としてずっと生きてきました。指導者として自分自身の個性をどういうことを考えて、何をやってきたかを1人でも多くの方たちとコミュニケーションを取りながら、シェアして、できるだけ多くの指導者とふれあえる場所を作り、何かインスピレーションを与えられたらいいなというのが、これからやっていく仕事の中で自分の中でテーマとして持っていることです」

 ――具体的なプランは。

 「少しずつ以前からのお付き合いのある方達からもお話をいただいています。斎藤さんともこんなことやっていこうとか、それ以外でもこんなことやらないか、と話しています。今までのようにどこかのチームにどっぷり入って、選手1人1人のパフォーマンスをつぶさに見てという指導より、選手をとおして指導している人たちとコミュニケーションを取るというような、そういう仕事ができたらという思いは持っています」

 ――自身の著書「野球における体力トレーニングの基礎理論 『鍛える』『投げる』『打つ』」(ベースボール・マガジン社)のような書籍の執筆、メディア出演なども視野に入っているのか。

 「いや、それは必要に応じてと言いますか。(書籍は)読み込んでくださっている方もたくさんいると聞く反面、みんなに難しい、難しいと言われていまして…。何年経っても自分の中で変わらずに説明できる、なるべく自分の基礎、基本を書こうと思って、それなりに時間をかけて、落としどころに一番時間がかかって、(書籍を)出すまでに注意したところではあったんですけど、やっぱり難しいと言われていたり…。あとは、本を読んだだけではなかなか伝わらないなというところがあると思うので、本を読んで興味を持って頂いた方たちが“中垣と話してみたい”とか、そういうものを増やしていけたらいいかなと思っています。講演やセミナーを開くこともあると思いますが、フィールドに立たせてもらえるのであれば、僕自身がコーチと一緒にいて、選手がここにいたら、“中垣さんだったらどういう風に話をしていくの?”というようなことをそこにいる選手と僕がコミュニケーションをとりながら、コーチの方達にも見ていただけたらいいなと思います。その中でコーチの方達に“自分だったらこういう風にこういうアイデアがある”と考えてもらえるような場所を作っていけたらと思っています。選手1人1人というよりは、もう少し広く伝えていって、指導者の方々がそこから何かヒントを得てくれればと思っています」

 ――対象は野球になるか。

 「いいえ、野球以外の方達ともたくさん共有できたらいいなと考えています。何でも声を掛けてくれれば、行ってみたいなと思っています。スポーツパフォーマンスというものは一体どういうものか、と僕はずっと自分なりに考えてきました。野球出身ではない僕が野球で指導を行ってきたことというのは、スポーツパフォーマンスの構造をまず考え、それを野球というスポーツに当てはめて行くということです。野球というスポーツはゲームの構造を見ても、投打守の技術を見ても、とても個性の強いスポーツだと思います。ここで、僕がやってきたことが少しでも役に立てたのであれば、他のスポーツにおいても与えられる示唆があるのではないかと期待しています」

 ――そう考えるようになったきっかけは。

 「僕自身は野球の中で生きたわけではないので、スポーツ全体を見させてもらう思考で野球も見てきました。特に野球はその側面が強いと思いますが、野球なら野球の社会で生きて行けてしまうということも言えると思います。そうするとその種目の中だけで成熟していって完結してしまうということも起こりやすくなると思います。正しい成熟をしている場合もあるけど、もう少し視点を広げてみた場合に、意外に当たり前と思われていたところに穴があったり、そういったことができるだけ漏れないようにという意識はずっと思ってきました。本当に幸運だったと思うのですが、ファイターズ在籍時にたくさんいい選手が出てきてくれたり、メジャーリーグからも指導者として声をかけてもらえたり、オリックスでもまたチームの上昇気流に一緒に乗らせてもらうことができました。そういう中で“中垣は何をやっているの?”と思ってくれる人が少なからずいたと思います。ただ、(自分が指導しているものを周囲が)見よう見まねでやってしまうと、伝言ゲームじゃないですけど、伝わっていく内に僕が意図しているここを抑えるべきというものとかなり違う伝わり方をしていることも少なくないと思っています。そういったものが、どうやったら埋められるチャンスがあるかなと思っています。プロ野球を長らくやらせて頂いて、素晴らしい選手たちに出会えて、素晴らしいチームでこれだけ勝たせて頂いて、もう少し自分の立ち位置を変えることで、何か挑戦できることがあるんじゃないかなという気持ちも持っていました」

 ――間違って世間に伝わってしまっていると思われる出来事とは。

 「例えばですけど、ファイターズに入ってすぐの頃、20年前くらいから、バーを(両肩に)担いで横に動くドリルをやっています。いろいろな人がマネしてくれるようになって、ある時、雑誌の連続写真で中学生が同じ事をやっているのを見て…全然、違ったんですよ(笑)。“あれ?”と思って。こういう解釈で伝言ゲームでこういう風に伝わってしまったのか、と。それとも、どこかで見た指導者の方がそういう解釈でやられていたのか。その方の方が正解に近いかもしれませんが、僕がやっているテーマとはかなり違ってしまいました。メソッドだけ持っていても、運動の本質を変えることは難しいと思います。筋力や持久力など、生理的な変化・適応によって体力を向上させることと、それらを運動技術に統合してくこと、この両輪がうまく回って行くことがパフォーマンス向上には不可欠と僕は考えています。両方を目的とする手段を中心に、足りないこところはそれぞれに比重をおいて進めていく、それらが各競技においてパフォーマンス向上の下地になると思っています。そういった考え方の基礎や基本と僕が考えていることを、多くの方とシェアできるチャンスを作れたらと思っています」

 ――日本ハム時代に中垣氏の指導の下、選手たちは股関節周りをうまくつかって跳ねるようなジャンプのドリルをよくやっていた。体を上手く使い、最大の力を発揮するようなイメージだったのか。

 「最大かどうか分からないですが、できるだけ強く動きのバラツキを少なくという狙いはあります。発揮した力をできるだけ逃がさないようにするためにはどう動くべきかというようなイメージで選手たちには伝えていました」

 ――過去に指導した選手の中で、特に大谷、ダルビッシュ、山本はメジャーでも活躍。トレーニングやフォームなどマネをする選手が多い印象がある。

 「マネの仕方が問題だと思います。僕が由伸と出会った時は既にチームで一番の投手でした。僕は彼のパフォーマンスにはほとんど携わっていないの何とも言えませんが。上手くいかないときに“ガッキーさん、昨日どうなっていました?”と聞きにきてくれることはありました。ただ、由伸は育成段階を共に過ごしたダル(ダルビッシュ)や大谷に携わった感じとは違うので、彼のパフォーマンスをどうこう言う立場ではないと思います。ダル、大谷に関しても、僕はその時、少しは貢献しているような気持ちになっていたと思いますが、彼らの凄さを見れば見るほど、僕はただそこにいただけで、何も僕じゃなくてもうまく行ったんじゃないかと思っています。由伸は普通の日本人と体のサイズが近いので、あれだけのパフォーマンスをしているとマネをしたくなる選手が当然でてくると思います。ただ、体の各体力要素や形態がどれだけ自分と近いものがあるのか、動きの特性がそれをマネできる状態にあるのか、マネをするにしてもどこをどうしたいか考えないと上手くいかないと思います。技術の中のどういう要素をどう自分の中に組み入れて行くのかという着眼点を持って取り入れないと、うまくいかないことも出てきてしまうのではないかと感じます。ただ、由伸さんこんなことやっている、大谷さんこんな風に打っている、ダルさんやっぱりすごいな、ここをマネしてみよう、というようなことではうまくいかないことが多いと思います」

 ――大谷は日本ハム時代にダルビッシュに比べて投げることが不器用と言われていた印象がある。

 「投げることに関しては、大谷の中で投打を比較した時に打つことより動作をコントロールするのが簡単ではないと感じながらやっていたと思います。ただ、大谷が上手くないとか不器用かというと、どの次元で話しているのかということだと思います。大谷が予想を超えたことを見せ続けてきているので、ダルビッシュに比べたら投げるのが少し不器用に見えることはあるかもしれないですが…。大谷はとても腕も長いので、最後に思い切り腕を振ってスイングのタイミングを合わせることは腕のスイングスピードの速さも加わり容易ではありません。方向とタイミングを合わせることは、一緒にやっていた時期は本当に時間をかけてやってきました。その中で不器用だとは全く思いませんでした」

 ――盗塁は自己最多59盗塁を記録した。以前にSNSで日本ハム時代のトレーニングメニューをしている姿も公開していた。

 「投打両方やるというのは異例の取り組みではあったのですが、できるか、できないかは本人次第でやってもらうしかないと思っていました。本当にあの時期(日本ハム時代に指導した時期)が邪魔になってなかったらいいなと。日本で両方で成果をあげたから、米国でも両方をやれるっていう、そのプロセスに自分が携われたのは、僕のキャリアの中ではものすごく幸運なことだったなと思っています」

 ――直近の大谷とのやり取りは。

 「内緒です(笑)」

 ――近年のプロ野球界の課題、改善したなと思っていることについて。

 「自分自身はよそ者だと思ってやって来ましたので。僕がプロ野球を通してやらせてもらってきたことは、スポーツパフォーマンスの真実はどこにあるのか一生懸命考えて、それを一流のアスリートたちの中でどこまで実証できるか、その繰り返しです。もらったチャンスに関しては、もちろん他のコーチとコミュニケーションを取りながらですけど、思い切ってまずは自分を信じて相手の反応を見ながら取り組んできました。例えばダルビッシュはどんどんそれを成立させてくれた。そういう選手たちに助けられながら、仕事を広げていけたと思っています。その中で、もちろん上手くいかない例もたくさんありました。そうすると、後になって、なんであの時にこのことに気が付かなかったんだろうと思うことも少なくありません。ずっと繰り返して仕事をしてきたので。これでヨシというのは、どうやってもないだろうなと思います。トレーニング施設に関してもやりたいことをやりやすい状況が、僕が入った20年以上前に比べたら随分整ってきていますし、着実に進歩している結果が、これだけ素晴らしい野球選手たちが育っている背景にはあると思います」

 ――年齢によるパフォーマンスの変化をどう考えているか。40歳以上でも現役でプレーできる選手が増えている印象がある。

 「どういったことがスポーツパフォーマンスの要因になっているかは、以前より明確になっていることがたくさんあると思います。体力的にも技術的にも、体力を維持するための栄養の取り方、休息の取り方、以前よりはスポーツパフォーマンスの要因になっていることが明確になっています。当然、体力的にはある時期を境に加齢とともに衰えていきます。それを補うために何であれば向上できるか、何によって補えるのか。そういうことを考えられる思考がある人が生き残りやすくなっているとは思います。ただ、同時に全体的なパフォーマンスも上がっています。その中で年齢が進んでいっても生き残っていくのは、その時代にその人が与えられたもので、しっかり考える力がある選手ではないかと思います。長くやれる選手が以前より増えていくのかもしれないけれども、全体のパフォーマンスが上がっている中で、それを維持することは、いずれにしてもどの時代でも難しさがあるんじゃないかなと思います」

 ――今、気になっている競技、業界は。

 「どの競技種目ということではなく、色々なスポーツで自分が何をできるのかやってみたいです。最初にマイナーリーグにいった時を含めて27年くらい野球中心の仕事をやってきたので、他の競技で野球で四半世紀以上自分が培ったものがどう使えるのかをみていきたいです。自分自身を検証しながら、視野を広げて行くためにも、スポーツ以外の方々と接する機会を増やすことも楽しみにしています」

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