2度目のグラミー受賞なるか!? 注目の音楽家・宅見将典とは…2月3日授賞式前に知っておきたい音楽人生
スポニチアネックス / 2025年1月16日 19時1分
【ききみみ 音楽ハンター/宅見将典<前編>】2月3日(日本時間)に行われる世界最高峰の音楽賞「第67回グラミー賞」授賞式で、一昨年に続き2度目の受賞が期待される日本人がいる。作編曲家でマルチ・インストゥルメンタル・アーティスト、宅見将典(46)だ。世界で最高評価を受ける中、国内での知名度はまだ高くない。今回、宅見本人へのインタビューを通し、彼の音楽人生を深掘り。前・後編に分けて紹介する。(萩原 可奈)
23年の「第65回グラミー賞」ではMasa Takumi名義で発表した「Sakura」が最優秀グローバル・ミュージック・アルバム賞を受賞し、一躍時の人となった。快挙から2年、今度は映画「氷室蓮司」の主題歌にもなった楽曲「Kashira」がグローバル・ミュージック・パフォーマンス部門にノミネートされた。
彼の音楽の原点は小学生時代の吹奏楽部。トランペット担当だったが、多くの楽器に囲まれ「楽しみながら飽きたら次の楽器を弾く」毎日だった。13歳で出会った「X JAPAN」に多大な影響を受け、YOSHIKIは音楽の師匠だ。自身もロックバンドを組み「バンドにある楽器は弾ける」と、独学でオールラウンドプレーヤーに。後に作・編曲でも大きな武器となった。
2000年に3人組バンド「siren」でメジャーデビューしたが、3年後に脱退。AAA、DA PUMP、EXILEやアイドル歌手への楽曲提供などで活躍する中、運命の仕事が舞い込んだ。ジャマイカ出身のレゲエユニット「スライ&ロビー」のアルバムにギターで参加しないかと声が掛かった。快諾し、数曲に参加したそのアルバムがなんと、グラミー賞レゲエ部門にノミネートされた。
自身がかかわった作品がノミネートされたことを受け、米ロサンゼルスまで授賞式を見に行った。2011年のことだ。「その瞬間に人生が激変しました。アメリカの紅白歌合戦なんですよ。日本であの面々を絶対一気に見れない。世界最高のパフォーマンスを目撃して、またここに戻ってきたいと強く思いました」。現地で師匠・YOSHIKIに会い、その思いを伝えると「まずは英語だね」との助言を受けた。「帰国後すぐ英会話スクールに登録して、英語の勉強を始めました」。
グラミー賞へ猪突猛進。日米を往復したり、アーティストビザで3年間、暮らしもした。音楽制作だけでなく、その音楽を広めるのも自力作業。現地で「パーティーに出続けた」といい、会場で音楽データを配り、人脈を広げ、情報収集した。毎回ハットをかぶり、トレードマークとして相手に印象を残す。そんな努力が、米国での公報宣伝を助けてくれる人々との出会いにつながった。
LA生活の最後はグラミー賞授賞式会場の近くに住み、運命の場所を常に意識して生活した。米国でリアルな英語を覚え、現地の音楽や人々の価値観を肌で感じ、日本のアイデンティティにも気づいた。米国の“国技”である洋楽テイストで勝負するのではなく、日本独自の音楽性を打ち出すことを決意。そこに米国人が聴きなじんだテンポや音の周波数をブレンドしていくという手法にだとりついた。
そして一念発起から12年たった2023年、遂に夢をかなえる瞬間が訪れた。《後編へ続く》
◇宅見 将典(たくみ・まさのり)1978年(昭53)11月14日、大阪府出身の46歳。作編曲家/マルチ・インストゥルメンタル・アーティスト。11年、自身が手掛けたAAAの「CALL」が第53回日本レコード大賞・優秀作品賞を受賞。グラミー賞受賞後の23年7月、文化庁長官表彰(国際芸術部門)を受けた。
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