三田村邦彦 仕事人の道を歩む 藤田まことさんのように「全て受け止め」極める――演技に“色”ついた
スポニチアネックス / 2025年1月19日 5時3分
【俺の顔】テレビ朝日系「必殺シリーズ」の飾り職人の秀役などで知られる俳優の三田村邦彦(71)。劇団に入って間もなく主演映画が決まり、若くして次々と人気ドラマに出演を果たしてきたが、順調すぎるゆえの苦悩もあった。「師匠」との出会いをきっかけに、じっくりと芝居に向き合う日々を送っている。(吉澤 塁)
とうとうと過去について語り始めると自然と頬が緩んだ。笑みをたたえるたびに目尻に浮かび上がるしわは、その45年以上のキャリアの積み重ねを物語っている。一方で、大きく黒い瞳は1979年の銀幕デビュー時と全く変わらない。じっと記者を見つめるその目力は強い。
「昔は“目がギラついている”なんて言われて、アイドルのようにもてはやされていたこともありました。今は穏やかですよ。でも時々、当時のギラギラが心の中でよみがえることもありますね」
その“ギラギラ感”が満ちあふれていた79年、運命的な作品と出合った。作家・村上龍氏の芥川賞受賞作「限りなく透明に近いブルー」の実写映画だ。まだ無名俳優ながら主演に抜てきされた。
「あの作品がなかったら間違いなく今の自分はいませんでした。でも最初は何度も断ったんです。本当にやりたくなかった。まだ何者でもないのに生意気ですよね…」
当時の三田村は地元の新潟から上京し、蜷川幸雄さん、石橋蓮司(83)らが所属していた劇団青俳の養成所に入って間もない頃。アルバイトをしながら芝居をする日々も「自分は小学生の時から俳優になると決めていた。親は厳しく勘当されるような形で上京したのですが、劇団に入ったことで僕の夢はかなった。だから嫌なことはやらない。満たされていた」と振り返る。
当時、ちょうど「限りなく…」の主演を探していた村上氏の目に留まり、熱烈なオファーを受けたが拒み続けた。「主人公は薬を売って、女を男に売って、生きづらさを人のせいにする。全く共感できず、そんな芝居はしたくなかった」。それでも再三の誘いに最後は折れた。「蜷川さんに“お前はバカか。こんなチャンス二度とないぞ”と怒られまして。その言葉が後押しになりました」
嫌々ながら演じた役でもその演技は多くの人の心を打った。退廃的な生活を送る主人公像と、三田村の青くさくも情熱的な芝居がマッチ。その後は「太陽にほえろ!」など話題作に立て続けに出演し、一躍人気俳優の地位を築いた。京都の撮影所と東京を往復する多忙な日々。順調すぎる役者人生を送ってきたのかと思えば「実はその当時の記憶がないんです」と明かす。
「撮影と台本を覚える毎日。自分の作品なんて見たこともないし、人の芝居なんて全く見ていなかった。ただ日々をこなすことで精いっぱいでした」
そんな芝居への取り組み方が変わったのは「生涯の師匠」との出会いがきっかけ。「必殺シリーズ」で主演を務めた藤田まことさんだ。「どんな芝居をしても受け止めてくれる、とにかく引き出しの多い人だった。僕もいろいろな役者と共演していますが、最高の役者といえば藤田さん。“俺は名キャッチャーやねん。どんな球でも受けたるわ”。その言葉が忘れられません」
それから一つの役と向き合うため、仕事の量をセーブ。他の役者のせりふまで覚え、自分が納得いくまで役作りを徹底するようになった。「今の自分が藤田さんと出会うまでの自分と会ったら“なんだこいつは”と思うでしょうね」。役への向き合い方は大きく変わった。
今では自分が藤田さんのような役者でありたいと考えている。現在、舞台「おちか奮闘記」に出演中。演歌歌手・丘みどり(40)の初の舞台主演作を助演という立場で支えている。「当時の藤田さんが自分にしてくれたように、丘さんの芝居を全て受け止めたい」。そう力強く語るまなざしは温かく、新しいものをつくり上げているという充実感に満ちていた。
≪舞台で丘みどりとの約束実現≫東京・三越劇場で上演中の「おちか奮闘記」は浄瑠璃三味線の名手(三田村)とそれを支える妻(丘)を描いている。2人はテレビ大阪「おとな旅あるき旅」で共演し親交のある間柄。三田村が「丘さんが舞台をやるときは僕も出るよ」と約束し今回の共演が実現。ただ演じる役は関西弁。「これまで関西弁の仕事は断っていたんです。せりふに感情が乗せられないから。でも丘さんが出るなら…」と悩んだ末にオファーを受けた。「テープを何度も聞いてイントネーションとかを学びました」と振り返った。
◇三田村 邦彦(みたむら・くにひこ)1953年(昭28)10月22日生まれ、新潟県出身の71歳。79年に映画「限りなく透明に近いブルー」でデビューし、同年にテレビ朝日系「必殺仕事人」に出演。翌80年に同ドラマの挿入歌「いま走れ、いま生きる」で歌手デビュー。82年に日本テレビ「太陽にほえろ!」でジプシー刑事を演じた。私生活では80年に女優の中山麻理(76)と結婚し、99年に離婚。2010年に再婚した。
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