中居正広 芸能界引退 MCの頂点としてテレビ界をけん引 男性史上最年少で紅白司会

中居正広

　タレントの中居正広（52）が23日、芸能界を引退することを発表した。

　中居を巡っては昨年12月末に女性との間に起きたトラブルを高額な示談金で解決していたことが発覚。騒動となり、各局がレギュラー番組の終了や休止を発表。22日にフジテレビの「だれかtoなかい」（日曜後9・00）の終了が発表されたことで、騒動前に6本あったテレビとラジオのレギュラー番組が消滅した。

　スポニチ本紙の取材では、トラブルは23年6月、中居と女性が2人で食事した後に発生した。女性はそこで「性被害に遭った」と主張する内容を勤務先に報告。その後、中居は代理人を立てて話し合い、慰謝料を含めた8000万円の示談金を支払って解決している。当時女性は中居の仕事先である会社に勤務していた。

　中居は9日にトラブルについて初めてコメントを発表し、トラブルを事実と認めて謝罪。「示談が成立したことにより、今後の芸能活動についても支障なく続けられることになりました」と報告していた。

　中居は1986年に旧ジャニーズ事務所に入所。同じ中学校に同事務所所属の生徒がいたことから友人と応募したのがきっかけだった。88年4月にジャニーズJr内ユニット「スケートボーイズ」から選抜された6人でSMAPを結成。リーダーとしてグループをけん引した。

　特に力を発揮したのがMC業。才能を最初に見いだしたのは故ジャニー喜多川氏。機転の良さやタレントとしてのサービス精神の高さを見込んで、常に側に置いて“英才教育”を施した。ジャニー氏とテレビ局スタッフとの打ち合わせの場に、中居は必ず同席。そこで出た言葉や気づきは漏らさず書き留めた。メモ帳は細かい文字でぎっしり埋まっていたという。当時を知るテレビ局関係者は「番組出演前に緊張のあまり、吐くことも度々あった。その重圧を乗り越えるために念には念を入れた準備をしていた」と振り返る。

　初めてバラエティー番組に本格進出したアイドルだったSMAP。そのリーダーを務める中で中居のMC業の腕は磨かれ、グループの人気の高まりとともに仕事も増えていった。そして1997年にNHK紅白歌合戦の白組司会者に抜てきされた。当時、中居は25歳。男性では史上最年少の紅白司会で、この記録は今も破られていない。その後紅白の司会を計6回担当。07年には紅組司会を務め、局アナ以外で初めて紅白両方の司会を経験した。

　MCの頂点に上り詰め、平成、令和のテレビ界をけん引した中居。タモリ、ビートたけし、明石家さんまの〓お笑いビッグ3〓や笑福亭鶴瓶、松本人志、石橋貴明らそうそうたる顔ぶれの先輩と番組で共演し仲を深めた。テレビ局関係者は「中居さんはヤンキー的なやり取りをうまくMCにも生かしていた。大御所の先輩にも、芸歴が浅い後輩にもあえて強く当たることで相手の素の部分や親しみやすさを引き出した。信頼関係を築いた上でやるから、相手も全く悪い気はせず〓かわいい後輩〓〓頼れる先輩〓と感じる。視聴者からも愛情の裏返しのように見えたのではないか」と指摘する。

　さらに大災害が起これば、迅速な寄付や救援活動。業界内でも「スポンサーが最も好む、文句無しのパブリックイメージ」との高評価は長年不動だった。

　一方、近い関係者の間では、身勝手な一面を指摘する声もあった。16年12月の「SMAP×SMAP」（フジテレビ）最終回。中居が全スタッフにスニーカーをプレゼントしたことが報じられ話題になった。ただ、他のメンバー4人はそんなサプライズを事前に知らされていなかった。現場では他のメンバーの視線が気になり、スタッフらも大はしゃぎで受け取ることはできなかったという。芸能関係者は「リーダーとしてSMAP名義でプレゼントすれば素晴らしい話だったのに、中居さんにそれができなかったのは本当に残念だった」と漏らした。

　女性歌手との交際が明らかになった時も、メンバー内で物議を醸した。SMAPと女性歌手の親交は、もともと香取慎吾の紹介で始まった。ほどなくして、メンバーには内緒のままに中居が交際を開始。報道で2人の関係を知った香取は呆れ、周囲に不満を漏らしていたという。

　そんな中居には、かつて「SMAP解散」以上の危機もあった。それは20年3月末での旧ジャニーズ事務所からの独立と、22年夏から23年1月にかけての体調不良だ。「独立当時は香取、稲垣、草なぎ同様、テレビ出演の激減が心配されました。しかし、大きな減少はなく乗り切ることができた。体調不良に関しては〓重病説〓が流れた時期もあり、実際に中居さんも3カ月半ほど休養していました。ただ、復帰後の仕事は順調そのもの。最近はCMも増加傾向だった」。

　今でこそアイドルが幅広い分野で司会を務めるのは珍しくないが、その先駆者だった中居。細かい気遣いとサービス精神で多くの人に愛され、テレビＭＣの頂点にまで上り詰めた男が、身勝手な行動で最悪の結果を招いてしまったのなら残念でならない。